それは何色。

□15話
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前回までのあらすじ


私、田中花子は幼い頃、この杜王町で、殺人鬼吉良吉影に両親を惨殺された。
私はその瞬間から復讐のため、人生の全てを捧げることを決めた。

しかし、運命は残酷で、吉良吉影は私の目の前で事故死してしまう。

行き場のなくなった復讐の感情を事故死の原因となったクラスメイトの東方仗助、その友人たちを殺すことで果たそうとする私だが、そんなときに東方仗助に告白されてしまう。

特に彼に興味のなかった私は、復讐のためにも彼と交際を始め、彼の友人とも交友をもつことになる。

そんなとき、私は岸辺露伴のスタンド能力によって、全ての計画を暴かれ、そして自らもスタンド能力に目覚める。

仗助君を殺せなかった私は自殺しようと試みるが、説得され結局彼らとまた青春をおくることになった。


私のスタンドを紹介しよう。
ドールハウス。
能力は相手のスタンドを操る。
操ることで自在に相手のスタンド能力が使えたり、相手のスタンドの能力を無効化することができる。
操る条件は本体が私から3メートル以内にいること、本体が誰であるか顔を把握している必要があること。





こうして再度平和になった杜王町であるが、私たちはまだ知らなかった。


未だにこの町に巣くう巨悪の存在に。


























「花子、一緒に帰ろうぜ。」



ホームルーム後、仗助君がのっそりとやってきた。



「仗助君、申し訳ないのだけれど今日はバイトよ。」



「またバイトかよ〜…。ていうか前から聞いてるけど何のバイトしてんだよ。」




バイトという言葉に反応したのか由花子がやってきた。


由花子は今日も黒髪をたなびかせ本当に綺麗だ。




「また違法バーが摘発されたそうよ。なんだったっけ?BAR cascadeっていうところ。」



そのバーは私が以前違法バイトを行っていたところだ。


先日の騒動をきっかけに辞めたのだが、マスターは私の情報を警察には上手いこと隠してくれてるのかそれとももう働いてなかったことになってるのかその飛び火は私には現在飛んできてはいない。



ついでにアルバイト内容はとりあえず仗助君たちに言うつもりは現在ない。

ここでは言えないようなことをしていました、としか言いようがない。




「アルバイト、新しいところよ。」



復讐のため、杜王町に住まなければならなかった私は遠縁の親戚であるアル中薬中ろくでなし男のお世話になっていたのだが、それも前回の事件をきっかけに家を出ることになった。



つまり、私は一人で生きていくためにアルバイトをする必要がでてきたのだ。




「新しいアルバイトってなにしてんの?」



ここ最近毎日じゃねーか、と仗助君は口を尖らせた。



「岸辺先生宅で住み込み家政婦してるの。」




私の答えにその場が一瞬凍りついた。


少し離れたところで話を聞いていたのだろう、億泰がぼたりと鞄を落とした。




次の瞬間、

「露伴の家に住み込み!!!!!?」


と仗助君が私の肩を掴んでぶんぶん揺さぶってきた。




首がもげそうな勢いで揺れる。痛い。




「お前、今露伴と住んでるのか!!!!?」



「そうよ。岸辺先生に出版関係のアルバイト斡旋してもらおうと思って相談したらなんでかわからないけど家政婦になっちゃった。」



どうせ住む家がないからそっちの方が都合がいいのだ。



「変なことされてねーよな!!!?」


仗助君は揺するのはやめたが、私の肩は掴んだままだった。なんなら握力は強くなっていってる気がする。めちゃくちゃ痛い。




「変なことってなによ?まぁ、たまにヘブンズドアーで覗こうとしてくるからそれは無効化してる。業務内容も基本的には楽よ。毎日全体に軽く掃除機かけて、週一で細かい掃除をして、洗濯物を干して、あとは…ご飯作ったり…?」



「露伴のやつ、オレの彼女の手づくりご飯を彼氏であるオレより先に食ってんのかよ…。」




明らかに落ち込む仗助君。



「そろそろ行かなきゃ岸辺先生怒るから行くね。」




これ以上はめんどくさそうだと見切りをつけたのだが、仗助君は私を離してくれなかった。




「花子、4日後ってさ、何の日だったっけ?」



「土曜日ね。」



「学校の行事がさぁ…」



「体育祭ね。」





最近仗助君が応援団の練習をしているのを知っている。


図書委員の私は最低限の競技に出るだけだが、確か康一くんは保健委員、由花子はチア、億泰はリレーとかでがんばっているのは薄々感づいている。




「オレ、体育祭でさ、花子の手づくりごはんとか食べれたらめちゃくちゃ頑張れる気がするなァ〜なんて…」



「却下。じゃあね。」



「ちょ、待って。なんでだよ!?」



仗助君は私の予想以上に必死なようだ。



「なんでって…必要性ある?」



「それを真顔で聞かれるあたり、オレがいかに彼女から愛されてないか自覚するからやめて…。」




くだらない、と私は言うと、仗助君の手を振り払って教室から出た。



いくら私といえども仗助君の気持ちがわからないわけではないけれど…、どうしてもそれを断る事情が私にはあった。



下足室でため息をついていると、後ろから由花子がやってきた。




「事情、話してみたらどう?」


由花子はすっとそれだけ言って外に出ていった。










それから体育祭まで完全に仗助君は拗ねたままだった。



そして、体育祭当日になった。




当日は天気予報通りにからりと晴れて体育祭日和といった感じだった。


昨日はとある事情で全く寝れず、既にねむたい。

選手宣誓をぼんやり聞いてるときに視線を感じて、ふと周りを見渡すと仗助君と目があった。

すぐに目をそらされたけれど。



そういえばこんなに仲違いしてるの初めてかもしれない。 



そもそも私がドライなのは承知の上で仗助君も私と付き合っている。

いや、付き合っているというのは正しい認識なのだろうか。



私は未だに仗助君を恋愛的に好きと感じていない。




ぼんやりしてるうちに開会式がおわったようだった。








「康一くん、元気?」


私の出場する最初の種目は午前の二番目だった。


それが終わった後、保健委員のテントに顔をだすと、由花子の恋人である康一くんがいた。



「花子さん、どうしたんですか?」



「実は絆創膏貼り直したくて…。」




競技のクラウチングスタートを頑張りすぎたのか、手に貼っていた絆創膏が外れ、砂だらけになっていた。




「え、この手なにがあったの!?」


康一くんは急いで消毒液と絆創膏をもってきた。




「ちょっと最近慣れないことしてるからね…。」



「そういえば仗助君の応援団、お昼休みのすぐ後だけど、花子さんも一緒に見ない?」


億泰君と由花子さんも一緒なんだ、と康一くんは笑う。



「そうね…、是非そうしたいわ。」



しばらく康一くんと喋っていたらもうお昼休みになったらしい。



「僕、由花子さんのところに行くけど花子さんはどうする?」


「あー…、私、仗助君のところいってくる。」



私は鞄を握り、テントの外に出た。


実はここからが私の今日の体育祭本番だった。

緊張している自分に気付いて少し笑う。



仗助君がどこにいるのかはすぐにわかった。


相変わらず私の彼氏の回りの人だかりはすごい。




「仗助ー、お弁当作ってきたの。」


「私の手づくりなの。」





黄色い声をかき分けて、やっと見えた彼の袖をくいと引っ張る。



「花子…?」



「仗助君、ちょっときてほしい。」




人気のない木陰に二人で座る。


いつの間にか仗助君の周りの女の子たちにも公認の彼女にされてしまっている私は、こういうときに二人になれる権利を持っているらしい。




「…んだよ。」



ちゃんと話したのは久しぶりな気がする。


私の緊張は最高潮だった。


「お昼御飯…作ってきたんだけどさ…」


「え…?」




さわさわと風がふいた。


今日は暑くて、木陰の風は心地よかった。




「作ってきたんだけど…冗談抜きで、本当に期待しないでほしい。」


「いや、するだろ。」


「しないで。」




鞄からお弁当箱を取り出して、仗助君に渡す。



仗助君はなんのインターバルもなく、すぐに蓋をあけた。



私はきまずくてそっぽをむいた。




しばらく二人で無言だった。





「えーと…一応料理名きいていいか…?」



「サンドイッチよ…。」




弁当箱のなかにはごちゃごちゃにパンらしき何かが詰まっていた。



ここまでくればお分かりだろうが、私はとてつもなく料理が下手である。





無言が気まずくて、私は弁当箱を取り上げようとしたが、彼は死守してくる。



「別に食べなくていいのよ?」



「いや、食うから!」



「酷いのが見た目だけだと思わないでね。」



「なんだよその予告!?」





仗助君は意を決したようにサンドイッチを一塊、弁当箱から取り出した。



「ついでに具は?」



「多分ポテトサラダ…?」




なんで疑問系なんだよ…、と彼はこちらをじとりと見つめたが、しばらくしていただきます、と口に放り込んだ。


咀嚼が二回ほどで完全にストップしたのを私はみた。



「吐き出せるようにビニールあるわよ。」


彼は手でべつにいい、と静止の形を見せ、ごくりと呑み込んだ。




「別にあなたのファンの女の子の手づくり弁当でもいいのよ?」



「別に不味いとか言ってねーよ。ただ、ポテトが限りなく生だったからびっくりしただけでよ。」



「それ、世間では不味いっていうのよ?」




仗助君はもう一塊、サンドイッチを取り出し、口に入れた。



「これは旨い。」


「市販のストロベリージャム挟んだだけだからね。」




またしても無言になった。


こうなるから作ってくるのが嫌だったのに何故彼に私は弁当を用意してしまったのだろうか。




「あー…これは?」


仗助君は三つ目のサンドイッチに手を伸ばした。



「それは岸辺先生宅裏に生えてたベリーをジャムにしたものを挟んだやつね。」



「なんで急にそんな野性的な挑戦したんだよ…。」




パンの間から黒々と光るジャムらしきものに仗助君は瞳を閉じ、深呼吸してる。


気持ちはわからないことないが、作った本人を前にそれが出来る彼の無神経さに少し感動を覚えた。




「仗助君、もういいわよ。」



「食べるって。」



「そんな嫌々食べてほしくて作ったわけじゃないのよ?」




私が弁当箱を取り上げようとすると仗助君は私の手をぱっと掴んだ。




「この怪我ってまさかこのサンドイッチのためだったりする?」




絆創膏の貼られた私の両手を見て仗助君は目を丸くしている。





「岸辺先生のごはんの分もあるわよ。」



岸辺先生はものすごく料理にうるさいので、毎回めちゃくちゃ作り直しをしている。


まぁどう頑張っても味は変わらず馬の餌を食ってる気分だとののしられるのだが。





「彼女がこんなにケガして頑張ってくれたんだから食べるよ。」



仗助君は私の手をスタンドで治してからサンドイッチを食べた。





「このベリーのジャム旨い…!!?」



「疑問形になってるあたりやっぱり失礼よ。……そのジャム、母が昔つくり方を教えてくれたのよ。私の唯一の得意料理。」





仗助君はそっかと答えて、サンドイッチを平らげた。



結局ベリーのジャム以外の味付けは壊滅的だったらしく何度かむせていたけれど。






「応援団、頑張るから見てくれよな。」



仗助君はそう言って駆けだしていった。




そういえば体育祭で誰かとご飯を食べたなんて初めてではないだろうか。


中学ではこんなことなかった。




「これも仗助君の、おかげなのかしら…。」





体育祭はまだ終わらない。

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