それは何色。

□12話
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私と東方青年はしばらく走り続け、駅前広場までやってきた。


こんなに走ったのいつぶりだろうか。

息が苦しくて肩が上下に動く。



東方青年も私ほどではないが息が上がっているように見えた。


東方青年は走ってから今までずっと私に背中を向けていてどうにもその顔は見えなかった。


しばらくお互いに無言だったが、急に東方青年はこっちを振り向く。

揺れるブルーの瞳。



「花子、もしかして泣いてた?」


東方青年は私の顔を見て、あたふたしている。

そんなに酷い顔をしているのだろうか。



「あーーー!!もう!!!」


東方青年はいきなりそう叫ぶと私の腕を強引にぐっと引いた。


気づいたら東方青年がいつもつけている香水の匂いが胸いっぱいになった。

つまり、私は彼に抱き寄せられたのだった。



「なんで家があんなだったの、オレに言ってくれねーの?…オレ、そんなに頼りねーか?」



そんなこと言われたってこっちはそれを言わなかった理由の記憶さえない。


関わりをもたれるのがめんどうだったのだろう、という予想は安易につくのだが。



「花子のこと好きだ…。」


東方青年は吐息まじりにそう呟いてよりいっそう私を強く抱きしめた。



彼は私の家と育ての親だと思われるあの男をみてなにも思わないんだろうか。



「仗助君、すごく注目集めてるから…。」


駅前広場はちょうど昼時で人で溢れている。

まぁ、ここは真夜中早朝以外は大体人通りが多いのだが。



「わりー…。」


東方青年はゆっくりと私から離れた。



「どうせ、あれみてオレが本当に花子のこと好きだと思ってるのか、とか考えてんだろ?」


東方青年はそれでも好きだよ、と笑った。



「なんでそんなに私が好きなの…?」


今までそう思ったことは何度もあった。


でも聞かなかった。

興味がなかったから。


じゃあ今は?




「オレ、花子のこと、中学から知ってる。ずっと好きだった。」


「え…?」


「オレが爆発事故に巻き込まれたときも花子が近くにいたの知ってる。泣いてたよな?オレ、花子の泣き顔見たくなくて、でもあのとき目が離せなかった。」



爆発事故。

その記憶も靄の中にあった。


どうして思い出せないんだろう。


あの場所にいたことだけは思い出せるのに。



「スタンド見えてるのも知ってる。オレが髪留め直したときに呆然としたのもスタンド見えてたからなんだよな。」



スタンド…爆発事故……

思い出せないのに何故こんなに重要なことに感じるんだろう。


どうしてこんな部分的に記憶がないのだろう…。




東方青年は私の手を握る。



「オレは花子のこともっと知りたいし、オレのことも知ってほしい。だから教える…。オレはスタンド使いなんだ…。スタンドはクレイジーダイヤモンド…。壊れたものを直す、怪我人を治す能力。」




ドキン。


なんだろう。心臓が嫌になるぐらいはやい。


クレイジーダイヤモンド



真っ白な霧にかかっていた記憶が急にクリアになった。



「だめ…だめだよ…仗助君。」



私は目をきゅっと閉じた。

閉じる前、東方青年の人懐っこいあの笑顔が急に懐かしくなった。

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