それは何色。

□9話
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露伴が去った後、オレはしばらくその場に立ちすくんだままだった。



「仗助…。」


億泰は心配そうにオレを見つめていた。



「オレ、ちょっと学校休むわ…。」


気分が優れなかった。


花子がスタンド使いかもしれない…。

いや、露伴のやつが嘘ついてる可能性もあるんだけどよ…。


オレは来た道を引き返そうと後ろに振り返った。



するとこちらに歩いてくる人影が見えた。


すらりとしたシルエット、特徴的な白い髪。

花子だった。



「花子…?」



花子を見た瞬間に先ほどの露伴の言葉を思い出す。


『花子と関わるな。』


露伴は真剣だった。





「仗助君、まだここにいたの?」


花子は早退すると駆けだしたときよりも明らかに顔色が悪くなっていた。



億泰は花子とオレを交互に見つめている。


先ほどの露伴の話を聞いていたから花子とどう接するべきか答えが見つかっていないのだろう。



そして、それはオレもである。




「花子…、お前家に帰るんじゃ…。」


「……。」



花子は俯いてめっきり黙ってしまった。


その目は前髪で隠されて見えなかったが、それでも彼女のピンクの唇は小刻みに震えていた。



「仗助君…、私の家…わかる…?」


「え?」



花子の声は震えて小さなものだった。


こんな花子は初めて見た。

オレは初めて花子に頼られていると気づいた。



「知ってるもなにも…花子、お前家教えてくれたことねーだろ?」


「そう…だったっけ…。そうよね…そうだった気がする…。」



花子は頭を軽く右手で抑えた。


やっぱり様子がおかしい。



「花子、お前やっぱり体調悪いのか?」



花子はしばらく黙っていたが、意を決したように頭を上げた。


その顔はあともう少しで泣きそう、というぐらいに不安で満ちているのがわかった。



「昨日からおかしいの…私。」


「昨日?」


「仗助君と別れてからの記憶がないのよ…。」


「記憶がないって…まったくないのか?」


「靄がかかったように思い出せない…。」



ふと頭に浮かんだのは露伴のスタンドだった。



億泰はさすがに今の花子の弱り方を見たら放っておけなくなったのか、花子のカバンを預かって、近くのベンチに座らせた。



「オレ、馬鹿だからよォ〜…なんの助けも出来ねーかもしれねーけど元気だせよ、花子…。」


億泰は自分のカバンから飴を取り出して花子に渡した。



「いつから入ってる飴かわかんねーけどよ。」


「そんなモン花子に渡すんじゃねーよ!」



オレと億泰のやり取りを見て花子はちょっと笑った。


こんなの初めてだからオレも億泰もビックリしちまって花子を見つめた。




「記憶がないことに気付いて、気分が優れなくって帰ろうとしたのよ…。」


花子は笑った顔のまま話しだしたが、それはすぐに悲しそうな笑顔に変わった。



「家が…どこか思い出せないのよ…。」



花子曰く、家が思い出せなくて、しばらく探したが、そんなむやみやたらに探しても見つかるはずがなく、オレが知っているかもしれないと思って学校方面に戻ってきたらしい。



絶対露伴の野郎が一枚噛んでることは明らかだった。


あの警告からの記憶喪失。

いくらなんでもタイミングが同じすぎる。




「仗助君が知らないってことはきっと他の誰も知らないでしょうね…。」



花子は先ほどのさみしそうな顔ではなく、もういつもの無表情だった。




「花子、オレも手伝うから家探そう。」


「気持ちはありがたいけれどどうやって探すの?」


「記憶を戻す心当たりがあるし、それに、家ならどうやってでも探せる。」


「どうやってでもって…。」



オレはカバンからノートを探って、空いてるページにペンを走らせた。



「億泰、コレ、頼んだ!」


億泰にノートを託して、花子のカバンをひっつかんだ。



「花子、行くぞ!」


右手に自分のカバンと花子のカバンを持って、左手で花子の手を握る。


オレは学校とは反対の方向に駆けだした。



気のせいかいつもはオレから一方的に掴むだけの手が握り返してくれたような気がする。

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