それは何色。
□8話
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「おはよ。」
「よぉ、花子じゃねェか。」
学校へと向かう道の途中で会ったのは東方青年と億泰だった。
「おはよう。」
なんだか今日は気分がいつもより若干ふわふわして夢見心地だった。
昨日の帰り道ぐらいからこんなふわふわした状況で、そういえば昨日って何したんだっけ…思い出そうとすると頭にもやがかかったようにどうにも記憶が曖昧だった。
「そういや最近露伴のやつ、めっきり姿見なくなったな。鈴美さん見送ったのが最後じゃねーの?」
「なんだァ?仗助、露伴と会いてーのかァ?」
「ンなワケねーよ…。」
東方青年と億泰の会話が耳に入る。
露伴……。
聞いたことがある名前の気がする…。
でも、こんな特徴的な名前聞いたら覚えてるハズだ。
「あ、花子は露伴わからねーよな。露伴っつーのはよォ、スッゲェ性格悪い漫画家でさァ。」
「漫画家…岸辺露伴…。」
「え、知ってんの?」
「え…?」
私は私自身が口ずさんだ言葉に驚いた。
漫画は読まないのだが、どうして漫画家の名前なんて知っているのだろう…。
「花子?」
東方青年が心配そうに私の顔を除きこんだ。
「大丈夫よ、仗助君。有名な方なのかしら、名前が頭に浮かんだだけよ。」
自分でも顔がひきつってることがわかる。
なんだろう、この気持ち悪い感覚は。
「ごめん、気分悪いから早退する。」
「え?ちょ、花子!?」
私は学校とは逆の方向へ走り出した。
思い出さなくてはいけない、と思った。
何かを自分は忘れているのだろうか。
「行っちまった…。」
「花子ってスッゲェ足速いんだなー。」
先程ものすごい速さで早退した花子は明らかに具合が悪そうだった。
「アイツさ、花子…、露伴の話した瞬間に顔色悪くなってたよな?」
「そーなのか?」
億泰は首を傾げた。
どうやら気づいたのはオレだけらしい。
花子の様子が気になりつつも学校へ向かう。
その途中の道に見覚えのあるバイクを見かけた。
「僕を無視とはいい度胸じゃないか?東方仗助。」
「なんでお前がここにいるんだよ、岸辺露伴よォ〜。」
噂をすればなんとやら、そこにいたのはオレの天敵と言っても過言じゃない、漫画家岸辺露伴だった。
オレと露伴はしばらくにらみあっていたが、しばらくしたら露伴はやれやれとため息をついた。
「生憎だが、僕はお前と見つめ合うために来たんじゃないんだ。お前の彼女、田中花子は元気か?」
一瞬でオレと露伴の間の空気が凍りついた。
「お前、なんで花子のこと知ってんだ、露伴…?」
「奇遇だが僕も彼女とは知り合いでね、とは言っても彼女は僕のことを忘れているだろうが。」
「まさか…お前スタンドで花子のこと攻撃したんじゃねーだろうな!?」
オレは露伴の胸ぐらを掴んだ。
露伴は眉間にシワを寄せたが、落ち着いていた。
「花子。悪いことは言わん。あの女とは別れた方がいいぞ。」
「何言ってんだ?」
露伴は胸が苦しいと、オレの手をどけてから身だしなみを整える。
オレはその間ずっと露伴を睨んだままだった。
「花子はお前のこと好きじゃないぞ?」
「それぐらい知ってる。」
「じゃあ、お前は花子がどこでアルバイトしてるか知ってるのかよ?」
露伴はオレを見て嘲笑したが、しばらくして真面目な顔になる。
「花子はスタンドが見えている。むやみやたらに花子の前でスタンドは使わない方がいい。」
「スタンドが…見えてる…?」
オレは髪留めを直したあの日を思い出した。
花子は直った髪留めを見て固まっていたがあれはもしかしてスタンドが見えて固まっていたのだろうか。
「東方仗助。お前やそこの億泰がどうなろうが僕の知ったこっちゃあないんだが、君のせいで僕の友人である康一君が巻き込まれることだけは許せないから警告してやる。花子とは関わるな。」
露伴はそれだけ言うとバイクにまたがる。
「待てよ、露伴。なんで花子と関わらない方がいいんだよ?オレはその理由をまだ聞いちゃねーぞ。」
正直今聞いた情報だけで頭がパンクしそうだった。
花子にはスタンドが見える?
アルバイト先は一度も聞いたことがなかった。
「花子とプッツン由花子は仲がいいそうだな?それに彼氏がお前で、クラスの友人に億泰。そして僕とも数奇な縁で知り合った。…こういう言葉を思い出さないか?」
露伴は一言だけ告げてバイクを走らせた。
スタンド使いは引かれ合う。