それは何色。

□1話
1ページ/1ページ


※ヒロイン衝撃展開あり








「オレさ、スゲー好きなんだ。田中さんのこと。」


話しかけたこともないクラスメイトに告白されたのは2日前のことだった。



東方仗助といえば、特徴的なヘアスタイル、これほどまでかというぐらいにアレンジ…否、改造された制服、そして外国の血を感じさせる大きな体と瞳のブルー。
人を惹き付けるなんとも言えない魅力がある青年だった。


元々そんな風に目立つのに最近余計に目立つ。

というのも、先日この平和な杜王町のトップニュースを飾った事件の当事者であるという噂がたっている。

そのニュースというものは、「謎の空き家爆発、救急車で引き殺された男性との関係は!?」なんて安っぽい見出しで新聞を飾っていた。

空き家爆発、なんていっても、空き家の一部壁が原因不明の爆発で損傷していたーーなんていう曖昧なものだ。


そんな訳のわからない事件に東方青年はどう関わっているかというと、その爆発に巻き込まれ大怪我を負ったということである。

まぁ、本人は次の日から大ケガながらも登校していて、あの不良のような見た目から想像できない真面目さを感じさせるものであった。


そんな回想はとりあえず置いておこう。

花子は右隣に歩く東方青年を見上げる。


花子より身長の高い彼はつかず離れず、という距離で隣を歩いている。


「オレの顔、そんなに気になる?」


東方青年がにっと笑う。


2日前の告白でなんとなくお付き合いすることになった私たちは共に帰路についている。


「別についてない。」


「つれねーの。」


東方青年はそう言いつつも優しく目尻を下げた。



「そーいや田中さん、家はどの辺なの?」



あんまりわからず歩いてきちまったからなァ、と目線を私に合わせる彼になんとも言えない優しさを感じた。



「ここまででいいよ、送ってくれるの。寄りたいところあるし。」



東方青年は少し困った顔をした。


「送ってくれるのはもっと私のこと知った後で。」


東方青年はしばらく思案してからニッコリとあの人懐っこい笑顔を見せた。


「オレ、やっぱ田中さんには敵わねェ気がする。」


今日はここまでで、と彼は私の手をきゅっと握った。



「いつかさ…、もっと田中のこと、もっと知れたらさ…」


「知れたら、なに?」



夕暮れの赤が背景になり、東方青年はまっ黒で、その表情は見えない。



「東方君…?」


「抱きしめ…たり…なんて…」


「は…?」



明らかに照れたような声に口があんぐりと空いてしまった自覚がある。


不良と名高い東方青年がこんなにシャイだったとは知らなかった。



「東方君がこんなにシャイだと思ってなかった。」


「えっ!?イヤ、いつもならこう、なんつーか、ちゃんと…」



焦る東方君に私は図らずも顔が緩んでしまった。



「1つ知れたね。東方君のこと。」



じゃあね、と手を降って、私は夕焼けの赤に背を向けた。





にしても、東方青年は何故こんな私のことを好きになったのか本当にわからない。


接点といえば、同じクラスであること、そして、私の友人が彼の友人と恋仲であったことを思い出した。


由花子の彼氏、康一くん…だったっけ?


明らかに不釣り合いな身長差である友人カップルのことを思い出す。


女性のなかでは高身長の部類に入るモデル体型の由花子と小学生のように小さな康一君のカップルは見た目的にもそのラブラブっぷりにも話題性を欠かないカップルであった。


康一君とのお付きあいを日々惚気る友人、由花子の会話の中で度々出てくるのが康一君本人、東方青年、虹村億泰、岸部露伴だ。

といっても、最後の岸部露伴に関しては同じ学校に通う学生でもないようで、断片的な情報しか入ってこない曖昧さであるのだが。



東方青年も康一君から私のことを聞いたことがあるのであれば、まぁ、共通点のない私を知っていてもおかしくはない、といった感じだ。





「まぁ、いきなり好きだから付き合ってくれっていうにはお粗末な共通点なのだけれど。」



ぼんやり考え事をしてるうちに目的地についたようだ。


路地をもっと奥に入った場所にあるその階段は普通の人なら気味悪がって敬遠するような見た目をしていた。


私は階段を下り、扉に手をかけた。


扉の上には申し訳程度に『BAR cascade』と古びて読みにくい看板があった。



「おはようございます。」



中はいつも通り真っ暗だった。
暗闇の奥から声が響く。


「今日はいつもより遅いじゃねェか。男でもできたかァ〜?」


「まさか。それならこんなとこにバイトなんてきませんよ。」




暗闇に慣れた目がバーカウンターを写す。

私はいつもの定位置に鞄を置いた。




「ぐひひひ、そりゃそうかァ。男持ちの女子高生がストリップなんてバイトしねェよなァ〜。」



東方青年との接点はほとんどないに等しいと先程言った。

なので東方青年は知るよしもないだろう。

クラスでも目立たない方の私が放課後にストリップしながら歌を歌う仕事をしてるなど。

家族を10年前に亡くした私が生活のためにどう暮らしているか、など彼が知っているワケがない。



「着替えてきますね。」



形だけ用意してもらった更衣室に入る。

今日の衣装は白を貴重としたミニドレスだった。



「そういえば共通点…他にもあったな。」



着替えながらポツリと呟いた。




「スタンド…だったっけ?東方君の背後に見える手。」



東方君は内緒にしてるみたいだけれど、と頬笑む私を東方君は知らない。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ