一個旅団兵士長と月の輪
□月影(げつえい)6
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『気を付けねぇとな。』
リヴァイの言った言葉が頭をよぎる。
あの時も感じた。嫌な予感…………………
まさか、こんな形で来るなんて夢にも思わなかった。
汚ない―――――――――――!!
堪えても、涙が浮かんでくる。悔しい。
アイシャの目付きが鋭くなる。そのままゲルハルトのほうを睨み付けた。
ゲルハルトは相変わらずヘラヘラと笑っている。
ゲルハルト「そんな怖い顔でみないでよ〜。最高審で決まっている調査兵団への税の割り振りはそれはそれは、厳しいものなんだよ〜。
君は街の声を聞いたことはあるかい?調査兵団への風当たりはかなり、辛いものだ。
民衆から税を巻き上げて、ただ悪戯に兵士を死なせて莫大な調査費を費やす。ってね。
でも、僕はそうは思わない。人類の未来のために、君たちは尽力し、命を省みず戦っているんだと思っているんだ。
人類の為にも巨人の生体を調べあげ、絶滅させる手懸かりを見つけないことには、人が巨人に脅かされる日々は永遠に続いてしまうのだよ?
だから、僕は君たち調査兵団への手助けをさせてもらうんだ。税だけでは君たちの活動費は賄えない分をね。わかるかな?
そして、その手助けを君にもしてもらいたいのだよ。僕の手助けを。それは調査兵団への手助けになる。違うかい?」
アイシャは立ち尽くしたまま、言葉が出ない。
エルヴィンも立ち上がり、アイシャの肩をトンと叩く。
アイシャがエルヴィンの方を見ると、エルヴィンは深く頷いた。
アイシャの瞳に溜まっていた涙がこぼれ落ちる。
その涙を自らの手で力強く拭う。
アイシャ「私は調査兵団の兵士として、人類の為に心臓を捧げると誓いました。………もし私が、兵団を退いて、兵団の………人類のこれからの未来の糧となれるのなら!!!」
右手の拳を握り締め敬礼した。
アイシャ「私は!!喜んで、兵団を退きます!!」
溢れ出る涙が止まらない。
ゲルハルトは満足そうな顔をし、席を立つ。
ゲルハルト「いい返事が聞けて、良かったよ〜。壁外調査の日までに荷物をまとめて、私のところに来なさい。首を長くして待ってるからね。」
ゲルハルトは、ほくそ笑みながら数人の男達を引き連れて執務室を出ていく。
扉を出ると、そこには壁に背中をつけて立っているリヴァイの姿があった。
ゲルハルト「おや〜、兵士長。いい夜だね。ご機嫌はいかがかね〜??」
ゲルハルトはニタニタ笑いながらリヴァイに話し掛ける。
リヴァイ「生憎、機嫌は最悪だ。」