一個旅団兵士長と月の輪
□下弦の月1
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ベリエス「そうね。エルザ。私が選んだ道はアイシャと一緒に歩むこと…そう決めたの。訓練兵団に入ってと過ごして、忌み嫌われるあたしに話し掛けて仲良くしてくれた、そんな彼女と私は歩みたい。」
ベリエス「それに、ほっとけないでしょ。この子は危なっかしくて。ほーら」
話途中のベリエスを無視するように、一人の男がやって来た。
アレックス「アイシャ話があるんだ。ちよっとこっち来い!」
そう言うと、云々言わさず二人を残しミサの細腕を引っ張り何処かへ行ってしまった。
エルザ「もー!大事なこと話してたのに!」
ベリエス「そうね〜。もうここまで来ると、羨ましい通り越して可哀想だわ!」
グイグイとアイシャの腕を引っ張りながら、兵舎の片隅に連れてこられた。
アイシャ「痛っっい!話って何よ!?」
捕まれた腕を引き剥がし、怪訝な顔をする。
アレックス「ここを卒業するとき、返事をもらう約束だった!」
アイシャ「………………………」
思い出したように、アイシャはアレックスを見つめた。
息をするのを忘れるほど、アイシャの顔は美しく整い、黒い髪は日の光をダイヤのように七色に反射する。神が恵み賜れた美貌だろうか。
どまでも透き通る白い肌。
見つめるその淡いスカイブルーの瞳に吸い込まれそうになる。
アレックスは、その薄い桃色の唇に吸い寄せられるように顔を近づけてきた。
彼の空気に押されるようにアイシャ は壁に押しやらる。
アレックスは壁に手を付き、もう片方の手でアイシャの顎を軽く持ち上げた。
アイシャは、とっさに顎の手を払い、顔を背け、赤面する。
アレックス「お前、調査兵団希望なんだろ?なら、俺も行く。多分、そんなこと考えてる奴が相当数いるようだぜ。」
アイシャの綺麗に結われた髪をなでながらアレックスは続けた。
アレックス「今のお前にその気がなくても、俺はお前を絶対に俺のもんにしてやんぜ。」
不適な笑みを浮かべながら、アレックスは去って行った。
ベリエス「大丈夫だった〜?」
物陰から、見ていたのだろう、ベリエスとエルザが顔を出す。
アイシャ「いつものことだから、大丈夫。って、見てたんなら助けてよ〜。」
エルザ「だってー、もし、何か血迷って、男にオッケー出しちゃうなんてあるかもしれないし。」
エルザは、からかうようにケラケラ笑っている。
ベリエス「あなたのその特別な器量じゃ、仕方ないわよね〜。世の中全ての男が虜になっちゃう!羨ましいわぁ〜んww」