一個旅団兵士長と月の輪
□月の剣10
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暗く空風の抜ける地下へと押し進むリヴァイ。
部屋の空気とは違う場所へ向かっているのは、夜風の匂いを纏う気流が教えてくれていた。
地下を抜けると、下界に繋がる広場に出る。
円形に延び拡がる無機質な煉瓦の壁。
巨大な煙突のように上部は屋根がなく吹き抜けになっていた。
そこから、夜風が舞い込む。
舞い込む風は足元から視野に拡がる範囲に絨毯のように敷き詰められた妖しげに光る紫の花を揺らしていた。
ハンジの部屋で僅かに薫っていた、あの液体の匂いがする。
「ん……………ぅぅ。」
月影の先の闇から響くうめき声。
リヴァイはブレードを投げ捨てた。
揺るりと月明かりの方に現れたゲルハルトの腕に抱えられたアイシャ。
そのこめかみには銃が突き付けられていた。
ゲルハルト「リヴァイ兵長。懸命な判断だ。」
アイシャは後ろ手に縛られ、猿轡をされている。
無数の傷が全身に広がっていた。
リヴァイ「アイシャを離せ。お前は終わりだ。」
リヴァイはゲルハルトとの間合いを測りながらジリジリと距離を詰める。
ゲルハルトは銃口をリヴァイに向けた。
ゲルハルト「何を言っている!リヴァイ兵長。私に勝ったつもりか!?上は私を裁けない。私の権力を前に全てを捩じ伏せてやる!お前ら全員、国家に対して牙を向いた反逆罪だ!
これは正当防衛……………リヴァイ、、お前はここで死ねぃ!!」
パ――――ンッ―――――――。
一発の銃声が鳴り響いた。
コマを割るように動く視界。
衝撃音に瞬きをしたゲルハルトの視界に撃ち抜かれた緑色のマントが宙に閃く。
消えたリヴァイの姿を探そうと目線を動かす間を与えず、横から強力な打撃波がゲルハルトの体を貫いた。
ゲルハルト「グゥハァア!!!」
ゲルハルトは意図も容易く、転がされたマリオネットのように吹っ飛んだ。
リヴァイの手のなかに、アイシャの体が寄りかかる。
力なく項垂れているアイシャの顔には生気がなく、瞬きをしない瞳は完全に光を失っていた。唇から流れる血液。
リヴァイは猿轡を解き、両手の縄をほどいてやった。
吹っ飛んだゲルハルトは、脇腹を押さえながら目の前に転がっていたリヴァイのブレードを掴み取る。
ゲルハルト「………リヴァイ。お前はその女に惚れてたのか?十分にに楽しませてもらったぞ!!
俺がその女を抱いてる間、その女はお前の名を呼び続けていたぞ!リヴァイ…………リヴァイ〜ってな!!ふはははははは!!」