一個旅団兵士長と月の輪
□忌み月(いみづき)7
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リヴァイはべリエスに視線を戻す。
リヴァイ「俺はあいつの気持ちが痛いほど解る。あいつも俺の気持ちが解っている。そんな仲だ。」
べリエスがハッとした。
べリエス「まさか、二人は……………!?」
リヴァイは目線を流す。
リヴァイ「あいつにとっては残酷なことだが、そう思っているのはあいつだけじゃねぇ。
…………調査兵団という国が牛耳る組織を前に、酷く理不尽な『構成』が罷り通ることもある。上のイカれた考えの野郎がやりそうなことだ。でかい流れには呑まれる。そこからでないと未来は生み出せねぇ。その為の犠牲だ。」
べリエスは眉を潜めながら、考える。
べリエス「何か秘策があるのね!?その『構成』を止められる何らかの手立てが!………エルヴィン団長なら打つ手が見つかっているんじゃないかしら!!」
リヴァイは、べリエスに珍しいものを見たような顔をした。
リヴァイ「お前は、見た目よりは頭が回る方のようだ。」
べリエス「じゃあ、何か訳があってアイシャを手離すのね!?」
リヴァイはべリエスの腕をポンと叩くと、歩き始めた。
リヴァイ「でかい博打とは言っていたがな。どう転ぶかは分からねぇ。俺たちは、ただエルヴィンを信じるしかねぇ。」
べリエスは、歩き去っていくリヴァイの背中を見送った。
べリエス「リヴァイ兵長!アイシャを守ってあげて下さいよ!」
後ろに聞く、べリエスの声に、リヴァイの右手がそっと上がった。
エルヴィンの執務室にリヴァイが入ると、そこには肩を落とし、項垂れたアレックスの姿があった。
エルヴィンに散々諭されたのであろう。
アレックスはリヴァイの存在に気づくと、言葉なく、執務室を後にした。
リヴァイ「余程、思い詰めてるんだろうな。」
エルヴィン「そうだな。お前はどうなんだ?これから起こりうるかもしれないことに目を瞑ることは出来るのか?」
リヴァイ「俺がゴネたところで、この計画が白紙に戻ることはねぇんだろうが。今更な質問するんじゃねぇ。」
エルヴィン「そうか。悪かったな。俺にもお前達の気持ちが痛いほど解る。」
リヴァイ「あ?それはどういう意味だ?まさかここに来てアイシャに情がわいたとか言わねぇよな。あと、あいつと同等にするな。」
エルヴィン「お前達の間柄を知ってて、まさかな。それはない。アレックスはお前達のことは知っているのか?」
リヴァイ「さぁな。お前には関係ねぇだろ。」
流れる時に、翻弄され続け、その日はやって来るのであった。