一個旅団兵士長と月の輪
□盈月(えいげつ)4
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兵団の元本部の地下からワラワラと出てくる、場違いな服装の人々。
それぞれ仮面のようなもので顔を覆い、まるでここが仮面舞踏会の会場であったと錯覚するような光景。
皆、半笑いを浮かべながら、馬車に乗り込みそそくさと帰っていく。
ゲルハルトが名残惜しそうに、エルヴィンの方に向かってきた。
ゲルハルト「今日は本当にいいものを見せて貰ったよ〜!愉快!愉快!貴婦人たちも満足してたようだし。これからも、巨人の討伐に勤しんでくれたまえ!」
アイシャはうつむいているハンジに目がいく。
硬く握っている拳が小刻みに震えていた。
それを見ると心の底から沸き上がってくる感情が爆発しそうだ。
でも、駄目だ。エルヴィン団長が譲歩しているほどの相手だから、きっと、かなりの地位と実権を握ってる人だろう。
調査兵団の資金源?
この腐れ下道が!!?
そう思うほどに、込み上げる怒り、、私だけじゃない、皆怒ってるんだ、、
それを押し殺すように下唇を噛み締める。
アレックスが、今にも飛びかかりになる。それをベリエスが必死に押さえてる。
エルヴィン「では、我々はこれで失礼させていただきます。今後の件に関しましては後程改めてお話ししようと…」
ゲルハルト「おや、君は!?」
エルヴィンの言葉途中で遮り、ズカズカ歩きだす。
リヴァイやアレックスをするりと通り抜けるとアイシャの前に立ち止まった。
ゲルハルト「君は誰かに似ている…………誰だ…?」
アイシャは、嫌悪感から下を向き、顔を見られたくない素振りだ。
そんなことはお構い無くアイシャの顔を指先で、クイッと、持ち上げ間近で舐め回すように見る。
ゲルハルト「名前は何と言うんだ??」
アイシャは、即座に距離をとり、兵士と貴族では、壁があるんだ!と言わんばかりに心臓に手を当て敬礼した。
アイシャ「私はアイシャ・アンネローゼであります!!」
ゲルハルト「アンネ………………ふはは、はははははは!!!これは面白い!実に面白い!」
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呆気に取られる。皆、訳がわからないようだ。
ゲルハルト「このような美しい方が、兵士にいようとは、驚いた。兵士にしとくのは勿体ないなぁ。」
ゲルハルトはアイシャの胸に押し当てられた手を剥ぎ取り、もう一方の手で撫で回した。
気持ち悪い……………!!
アイシャが、手を引こうと思った瞬間、
リヴァイがゲルハルトの手を掴み降り下ろす。
リヴァイ「おい、汚ねぇ手で触んじゃねぇ。」