一個旅団兵士長と月の輪

□皓月(こうげつ)3
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リヴァイは手前のテーブルにテイーカップを2つ向い合わせに置くと、長椅子にドカッっと腰を下ろし足を組む。

空気を察し、アイシャは向かい側にちょこんと腰かける。

カップに注がれた飲み物を口に含むと、緊張が和らいだ。

アイシャ「とても美味しい。私も紅茶が好きなんです。」

リヴァイ「そうか。………お前、今朝の奴とはどういう関係だ?」

突然の予想してない問いかけに、戸惑いながらも、アイシャは答えた。

アイシャ「彼は、訓練生の時からの馴染みで……一方的に好意をよせられて、その………迷惑してるんです。」

リヴァイ「なるほどな。そう言った奴等がお前の周りにごまんといて、お前はそいつらから、逃げるために顔を隠してると。」

アイシャはコクン。軽く頷く。

アイシャ「今回の壁外で巨人から襲われたとき、イニス班長は絶命する前、私に好意があったことを告げました。そして、目の前で巨人に喰われました。……………これから先、そんな思いをいくつ背負いながら生きていくのか、考えると耐えられません。

壁外から帰って、顔を覆うようにしてから、周囲の私に対する目に変化がありました。憐れまれ距離を置かれる。結局、彼らは私自身でなく、私を装飾品を見るような目で見ていたんだと、悲しくなりました。

でも、それでいいんです。その方が、ずっといい。もう、傷つきたくないし、傷つけなくてすむ…………」

リヴァイはテーブルに肘をつき両指を口の前で交差させながら聞いている。

リヴァイ「調査兵団に掲げてる紋章は何だ?お前はそれで自由か?外見を隠し、巨人とやりあうか?どんな些細なことが命とりになるかわからねぇ。明日死ぬかもしれねぇ状況で顔を隠して生きていくのか?

確かに、今日の訓練ではそれなりの動きは出来ていた。その顔に覆ったもんが支障ないとはわかったが、無いなら無いほうが、当たり前にやれるだろうが。そこまでして、自分を犠牲にするな。お前は、お前の命のことだけ考えろ。他人がどうじゃねぇ。お前自身がどうしたいかだ。

それでも、お前はお前自身を隠したいと思うか?お前は特別じゃねぇ。お前自身を胸はって生きろ。」

アイシャの背筋にビリっと痺れる感覚がする。

まただ。あの月夜の日に、感じたような。
覚めるような、感覚。

この人はどうしてここまで、他人の私を優しく突き動かすんだろう。

粗暴な口調で並べられる言霊が心のなかで迷いを解かしてゆく。

どうか、この人と…………
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