一個旅団兵士長と月の輪

□上弦の月2
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リヴァイは、アイシャに白いハンカチを差し出すとおびただしい出血のある頭にあてがう。

リヴァイ「ここを押さえとけ。じき血は止まる。」

そう言って下におりていった。

リヴァイは、固まっているペトラに
リヴァイ「おい、何してやがる。上の負傷した奴を介抱しに行け!」

鋭い眼差しで言う。ペトラは我に返ったように、「は、はい!」と返事を返し、回りを見渡した。

残りの巨人2匹もハンジ班が倒したようだ。

ペトラ「オ、オルオも、アレックスとベリウスを………………て、も、漏らしてる!!!」

その言葉にハッとするオルオだが、すぐに

オルオ「なっ!!!?そういうテメーもじゃねーか!!」

そう返されて、初めてペトラは自分も失禁していたことに気づいた。

そんな二人を尻目に、リヴァイはハンジのもとに向かう。

リヴァイ「誰も死なせない予定だったか?」

ハンジ「嫌。まぁ、最小限の被害で留まったと思うよ。」

リヴァイ「最小人数にすれば、それだけ被害が広がらずに済むと言ってたエルヴィンの予見どおりじゃねーか。」

ハンジは言葉なく頷いたが、奥歯を噛み締めた様子だった。

リヴァイは空気を察し、ハンジから去った。

ハンジの目の前には討伐したての、蒸気の上がる巨人首が転がっていた。

胸の奥から込み上げる感情を発散するように、巨人の首を蹴り飛ばした。巨人の首は意図も簡単に跳ね上がり転がっていった。

モブリット「ハンジ分隊長!!?」

心配するモブリットを振り返るその顔は、憑き物を落としたようなあっけなものだった。

ハンジ「…………大丈夫だ。モブリット。あの子を回収しよう。布で覆って、荷馬車に運んでくれ。」

3メートル級の巨人は、黒い布で巻かれると、驚くほど静かに大人しく動かなくなった。

負傷しながらも生き残ったアイシャたちは、取り巻くその現状に、目を疑ったが、巨人を捕獲し帰還する一切を口止めされた。


トロスト区、調査兵団拠点。

新団長エルヴィンが率いた、今回の壁外調査では、かつてないほどの低い死傷者数だったが、それでも全体の3割ほどの兵士を失った。

ほとんどが経験値の浅い新兵だった。

リヴァイ「フン。若ぇー奴が壁のなかで動きまわらねー模型を相手にしたって、外に出るとこの有り様だ。」

エルヴィン「今回は幸か不幸か、新兵の数が多かったからな。調査兵団の存在意義を理解してくれる若者が数多くいてくれたのは、一年前のあの虚遇が起こした産物だ。」

リヴァイは顔をしかめた。
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