一個旅団兵士長と月の輪
□月影(げつえい)6
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リヴァイは、鋭い眼光をアレックスに向ける。
リヴァイ「駄目だ。これは上との決定事項だ。お前の希望論は容認されねぇ。」
アレックスが今にも掴みかかりそうにするが、ベリウスに腕を押さえられ、制止される。
リヴァイ「これは、調査兵団として組織の認識が人類存亡をかけて遂行する重要任務だ。
お前の空っぽの脳みそでも、それぐらい判断できるだろ。私情を持ち込むな。お前は俺の班になる、命令だ。」
アレックス「誰が空っぽの脳みそだと!?」
アレックスが更に逆上するなか、べリエスは冷静に配置班の名簿に目を向ける。
べリエス「!?ないわ!アイシャの名前がない!どういうことなの!?」
アレックス「!?何!?」
全員が、それを確認する。
リヴァイは少し浅い溜め息を付きながら静かに口を開いた。
リヴァイ「アイシャ・アンネローゼは先日、退団届を提出し、正式に受理された。今度の壁外調査までには、兵団を抜ける。」
皆、固まり互いを見合った。
ペトラ「そんな!!どういうことですか!?そういえば、この会合にも来ていない!」
グンタ「ここ一週間、訓練も通常任務も普通にこなしていたが………」
エルド「俺たちには、直接本人から何も聞かされてなかったな。」
オルオ「どうせ、壁外調査が怖くなって、逃げ出したかったんだろ?そんな奴は珍しくねぇ。そんな半端な根性で兵団に居られるのも迷惑な話だ。良かったんじゃねーのか?」
ペトラ「ていうか。オルオ、なんなのその口調。そんな話し方今までしてたっけ?気持ち悪いんだけど…………」
それぞれが、アイシャの退団に動揺するなか、べリエスはリヴァイに目を向ける。
べリエス「何か、深い理由がありそうね。直接本人から聞くことも出来るけど、リヴァイ兵長。もし、貴方自身がそれを知っているんであれば、教えて頂けないかしら?」
リヴァイは察しがいいな、と思いつつ、べリエスに目線を向ける。
リヴァイ「黙っていたところで、そのうち分かることだ。お前らには命を掛けて戦ってもらうからな。包み隠さずに話すが、
アイシャは、ゲルハルト・シュナイダーに買収された。兵団の活動資金と引き換えにな。」
全員が凍りつく。
アレックス「まさか!?そんな………」
リヴァイは目線を流しながら、外に目を向ける。
リヴァイ「俺の班と幹部共しか知らねえ。末端の兵士まで知っていい話じゃねぇからな。
あいつは、兵団の為に自ら望んで、退団の道を選んだ。」