一個旅団兵士長と月の輪
□月影(げつえい)6
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リヴァイの言葉に触発され、感情が爆発する。
心の中の、不安や苛立ち、哀しみ、屈辱。負の感情全てに、押し潰されそうになった。
瞳からこぼれ落ちるものの中にその負の感情を詰め込んでいく。
でも、足りない……………それでも、足りない………
調査兵団から退くという現実。
それは、リヴァイとの別離………………
こんなにも恋して、やっと愛し合えたのに――――――――。
リヴァイの胸にしがみつく。
シャツを握り締める手が力を押し殺せず、ガタガタと震える。
リヴァイは目を閉じると、震えるアイシャの不安を消し去るように力強く抱き締める。
リヴァイ「お前が犠牲になることはねぇ。嫌なら嫌とハッキリ言え。兵団のことも、上との取り決めでそのうちどうにかなる。」
しかし、アイシャはその言葉に首を縦に振ることはなかった。
リヴァイは、アイシャの心の中に『決心』があるのだろうと悟る。
胸の中で泣きはらすアイシャを見つめ、時間の流れに身を任す。
複雑な感情が込み上げるなか、リヴァイも一種の『覚悟』を決めた。
アイシャの震えが段々と治まり、涙も涸れ果てたようだ。
落ち着いてきたアイシャを見て、リヴァイは立ち上がり、執筆机の方に歩き出した。
引き出しを開け、奥の方から何やら取り出している。
リヴァイはそれを握り締めると、アイシャの方に戻りそれを差し出した。
アイシャ「………???…………」
アイシャは、言葉なくそれを受けとる。
リヴァイの部屋の合鍵だった。
アイシャはハッとし、リヴァイを見上げる。
リヴァイ「これからは好きに使え。時間は気にしなくていい。ここは俺とお前の部屋だ。」
その言葉を聞いて、アイシャは立ち上がり、リヴァイに抱き付いた。
リヴァイも軽く腕を回すと、片手でアイシャの頭をポンポンと撫でる。
リヴァイ「明日も早い。そろそろ寝る仕度だ。」
リヴァイはアイシャを見つめる。
アイシャは見つめ返すと柔らかく微笑んだ。
その瞳の奥に、刹那の感情を見たリヴァイ。
胸の奥にズキッと、痛みが走る………。
二人は、互いの悲しみを取り払うように、熱いシャワーに身を投じた。
密着した体に流れ落ちる温かい、水流。
互いの指を絡ませ合い、肌の触れ合う感触をよりいっそ高める。
何度も何度も角度を変え、唇を重ねる。
深く押し入る舌先。
口から漏れ出す液体は顎を伝い、流れ落ちる水ともに消えてなくなる。
そして、見つめ合う…。