一個旅団兵士長と月の輪
□月影(げつえい)6
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誰も居なくなった部屋で独り。
エルヴィンは自分の執筆台の前に座り、口の前で両手を組んだ。
これで良かったんだ……………そう自分に言い聞かせた。
エルヴィンの部屋を出て、リヴァイとアイシャはリヴァイの自室に移動した。
柔らかな光が塵一つないリヴァイの部屋を照らし出す。
リヴァイが淹れてくれた紅茶を片手に、ボーっと、遠くを見つめるアイシャ。
その遠くに見る景色は、訓練兵の時代のことだった。
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初めて訓練兵として訓練を開始したとき、体力で劣るアイシャに初めて声を掛けてくれたのは、アレックスだった。
アレックス「お前、本物の人間か?人形みたいに整った顔してんな!!俺アレックス!宜しくな!それ重たいだろ!?俺が運んでやるよ!」
親友になってくれたエルザは常にアイシャの味方だった
エルザ「大丈夫だよ!落ち込まないの!私が付いてる!もう本当に泣き虫なんだから!ほら、もうなかない!誰がなんと言おうが私が、味方よ!」
ベリエスとの出会いは衝撃に溢れていた。
ベリエス「ちょっとー!あんたね!えらい特別な美人さんがいるって聞いた!本当にほんと。あら、警戒しなくていいわよ!こんななりだけど、あたしの心は乙女なのぉ!!」
雪山で遭難しかけた時も、
ベリエス「しっかり!!歩ける!?大丈夫よ!」
エルザ「そうよ!きっとこの先に目的地があるはず!間違いない!もう少しだから!」
それから…………
アレックス「お前のことが、好きだ。返事は訓練兵を卒業したときに聞くからな!」
訓練兵を卒業して、調査兵団の勧誘のとき初めてリヴァイ兵長を見知った。
団長も兵長も新任したばかりというのに、凄い貫禄があった。まるで昔から、調査兵団の団長や兵長だったみたいな感じで………
ベリエスもエルザもアレックスもその場に残ってくれた。震える脚の感覚………
それから、同じ班になったペトラとオルオ。
オルオの仲間のエルドとグンタとも知り合ったな。
初めての壁外調査で……
リヴァイ兵長に助けてもらった。劇的な出会いだった。
そして、あの月の夜。
私は初めて、恋に落ちた―――――――。
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ハッと我に帰ると、頬に一筋の涙が伝い落ちた。
それを見ていたリヴァイは席を立ちアイシャの隣に腰かける。
リヴァイは、アイシャの後頭部に手をやると、そのまま自分の胸に引き寄せた。
アイシャの額にリヴァイの温かい熱が伝わる。
リヴァイ「泣きたいなら、泣け。」