一個旅団兵士長と月の輪
□月影(げつえい)6
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リヴァイはゲルハルトに鋭い視線を向ける。
リヴァイ「俺の部下が世話になるらしいな。」
ゲルハルトはフンと鼻先で笑う。
ゲルハルト「もう。君の部下では無くなるけどね。残念だったね〜。君のお気に入りだったかな?」
リヴァイは、さらに強い眼光で睨みつける。
そんなリヴァイの肩をトントンと軽く叩いて、ゲルハルトは去っていった。
執務室の扉の方から、悲痛な声が聞こえる。
リヴァイが執務室の中に入っていくと、床に崩れ落ち泣いているアイシャの姿があった。
アイシャ「ううっ…………ぅぅ…………。」
拳を握り締め、腕を突き立て、力なく座り込んで震えている。
エルヴィンが、膝を付きアイシャの肩に手を置く。
エルヴィン「君は正しい選択をした。」
エルヴィンの言葉が突き刺さる。
そうだ。間違ってない。私の選択は間違ってない………………。
リヴァイ「エルヴィン。」
リヴァイの声にハッとする。声の方を見ると、リヴァイの姿。
また、涙が溢れ出てくる。堪えきれない。
リヴァイ「本当に、これでいいのか?」
リヴァイがエルヴィンに尋ねた。
エルヴィン「全ては調査兵団の為だ。彼女はそれを承知で選んだ。公に心臓を捧げた以上、何の犠牲も払わないで何かを得ようとするのは無理な話だ。」
リヴァイ「だから、こいつに犠牲になってもらい、壁外調査の資金ぐりにするって話か。」
エルヴィン「そうだ。これは彼女の重要な任務だ。」
任務!?そうか。任務と思えば………
アイシャは、奥歯を噛み締めた。心に決意する。
自然と涙が止まった。
アイシャ「もう。大丈夫です。」
肩に乗っているエルヴィンの手を触る。
エルヴィンはその言葉を聞くと肩の手を退け、アイシャと、共に立ち上がった。
アイシャ「エルヴィン団長。後2週間、私は調査兵団の兵士として、ここで努めます。ここから私が、居なくなっても共に壁外で戦えなくても、私は調査兵団の一員です。」
エルヴィンを真っ直ぐ見つめるアイシャはエルヴィンの心を揺さぶる。
彼女の純粋な心に罪悪感を覚えながらも、エルヴィンは優しく微笑みかけた。
エルヴィン「君はいつまでも、私達が誇る立派な兵士だ。」
そう言うと、エルヴィンはリヴァイに目線を移す。
エルヴィンの目線を追うようにアイシャもリヴァイの方に目線を向けた。
リヴァイは執務室を出ていく。
「失礼しました。」と、一言言うとリヴァイにつられるようにエルヴィンの前から、アイシャが立ち去った。