外科医長編

□消えない傷
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主人公視点



「えー!?全然帰ってこないと思ったら!」

 ナズハが叫び、アナやベポ、シャチ、ペンギンまで目を見開いて頷く。

「やだわー、キャプテンに彼女なんて!似っ合わないわー。」

 アナの言葉にローがおい、と言う。

「白ひげの船で告げるとか、キャプテン、もうちょっと雰囲気考えましょーよ。」

 シャチの言葉にベポもうなずく。

「マルコもびっくりだねー、突然行方不明だった妹が男と揉み合いながら降ってきたら。」

 ベポが言うと、シャチがケラケラ笑う。

「違ぇねぇ!」

「白ひげのモビーディック号に遭遇したときは危機を感じたがな。」

 ペンギンの言葉に私はカラカラと笑う。

「大丈夫だよ〜、私のバックスポンサーですから。」

 そりゃ心強いな、と言ったペンギンにアナがため息をつく。

「…のんきだね、まったく。」

「アナは一回ティーチに襲われてるからなー。」

 ティーチ。

 シャチの言った言葉に一瞬で目の前が真っ赤に染まる。

 感情のコントロールができなくなったのを感じながら、ぎりっと歯を食いしばる。

 と。

「おい、落ち着け!」

 突然ローの重みが肩にかかってはっとする。

 落ち着けるように深く息を吸えば、ローの低い声がした。

「…シャチ、その名前はこいつの前では絶対禁止だ。」

 全員が固まっているのを見て、私はこの数秒間になにが起こったのか認識する。

 私から円を広げるように広がった黒い覇王色の覇気が波を荒立てている。

 船内を見渡したペンギンが「駄目です、ほとんど倒れてます。」と言う。

 やっと落ち着いた気持ちを確かめるように胸に手を当てると、ローがため息をついた。

「あいつの名前を聞いた瞬間のお前の心臓はヤバかったな。握りつぶされるかと思った。ま、その心臓のおかげで被害は最小限で済んだが。」

 見渡すと、覇気にやられたクルーたちが泡を吹いている。

「一般人なら死んでいたぞ?気をつけろ。」

「…ん、ごめん…。」

 甘えるように回されたローの腕にすがると、あやすように額にキスされた。

「なんだ、結構ちゃんと恋人してんじゃねーか。」

 またも空気の読めないシャチの言葉に、クルーを引きずっているナズハからいいから手伝いなさいよっ!と怒号がとんだ。

 なんだか泣きそうになりながら、私は散らかった船内を見つめていた。
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