外科医長編

□水蜜の舞姫
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ロー視点



「キャプテン、あれ見てよ。」

 ベポが言う方を見ると、そこには人混みの中からもよく見える、美しいいでたちの女がいた。

「…ありゃ最近噂になってるソロの女海賊じゃねェか。」

 ペンギンの言葉にローは眉をひそめた。

「ソロの?女海賊?それがなんであんなところで踊ってやがる?」

「なんだ、キャプテン知らないんすか?」

 シャチがにやっと笑う。

「ありゃあ北の海随一の剣の舞い手、確
二つ名は『水蜜の舞姫』!」

 なるほど。

 ローは思わずうなずきながらその女を観察した。

 白い肌に栄える鴉の濡れ羽色の髪、アメジストのようなアッシュモーヴの瞳に、それを引き立てるように目尻に引かれた紅い紅。

 唇には薄く桜色の紅が引かれ、頭に飾られた薄桃色の花がどこかワノ国を思わせる。

 だが、容姿は誰がどう見ようと北の海出身だということを物語っていた。

「珍しいね、キャプテンが食いつくなんて。」

 ベポの言葉に曖昧に頷きつつ、ローはシャチを見る。

「あいつ、名前は?」

「アーベル・D・リア。キャプテン本当に知らないんですか?」

 ローは少し帽子の鍔を下げ、低く呟く。

「Dの名を持つ者…か。」

「キャプテン?」

 ベポが不思議そうに首を傾げる。

 ローはまたリアに視線を移した。

 と。

「見つけたぞ!アーベル・D・リア!」

「この間の借り、返してもらおうか!!」

 大柄な男が二人、人をはね飛ばしながら走ってくる。

「やばい、キャプテン!あいつヤられちまいますよ!」
  
 シャチが焦りながら足をばたつかせる。

 ローも一瞬これまでか、と思った。

 が。

「…もー…鬱陶しいなぁ…。」

 彼女は持っていた扇子をパチンッと閉じた。

 そして。

 ドゴッ…!!

 男たちは彼女が指先から放った何かによって足を貫かれた。

「うがぁっ!?」

「イッてぇ!?」

(なんだ今のは…!?ピストルか?だがどこにピストルなんて隠し持ってやがった?)

 思わず身を乗り出したローはマジマジとリアを見つめた。

「…しつこい男は嫌い。」

 そう言うと彼女は客にお辞儀してスタスタ歩いていく。

 一行はそれを黙って見送った。

 しばらくして、ローは一言クルーたちに告げる。

「欲しいな。便利そうだ。」
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