book

□フレーバー
4ページ/4ページ

黄金色に目を奪われた。





「お前・・・その頭は」


「あ、兵長。それが壊れてしまいまして…」


何が。そう問えば差し出された金具の割れたバレッタ。それはなまえが普段から愛用しているものだった。


「・・・」


なまえが髪を下ろしている所を見るのは初めてだった。
胸下まで伸びた髪は一本一本が艶やかで、風が吹き抜ける度に波打ち陽の光に反射しきらりと光る。その光景から目が離せない。

触れてみたい。



「どうしよう。これじゃ訓練の邪魔になっちゃう」


それはもっともだ。例えば髪に視界が奪われたら。例えば髪がワイヤーに絡まったら。ただ髪が長いというだけでも十分な事故要素がある事が否めない。立体起動では些細な事ですら命取りになるのだから。



「仕方ない、切っちゃおう」


「は・・・?おま・・・っ」


代わりになる物がないからと一束に纏めた髪にブレードをあてがいぎょっとする。訓練への姿勢は悪くないがいくらなんでも豪快すぎだ。とっさににブレードを取り上げる。


「兵長?」


「・・・」


取り上げたはいいがどうすればいいか分からない。理由をとってつけようにもまさか綺麗なのにもったいない、などとこっ恥ずかしいことが言えるはずなく。



「使え」


「え・・・」
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ