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□フレーバー
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黄金色に目を奪われた。
「お前・・・その頭は」
「あ、兵長。それが壊れてしまいまして…」
何が。そう問えば差し出された金具の割れたバレッタ。それはなまえが普段から愛用しているものだった。
「・・・」
なまえが髪を下ろしている所を見るのは初めてだった。
胸下まで伸びた髪は一本一本が艶やかで、風が吹き抜ける度に波打ち陽の光に反射しきらりと光る。その光景から目が離せない。
触れてみたい。
「どうしよう。これじゃ訓練の邪魔になっちゃう」
それはもっともだ。例えば髪に視界が奪われたら。例えば髪がワイヤーに絡まったら。ただ髪が長いというだけでも十分な事故要素がある事が否めない。立体起動では些細な事ですら命取りになるのだから。
「仕方ない、切っちゃおう」
「は・・・?おま・・・っ」
代わりになる物がないからと一束に纏めた髪にブレードをあてがいぎょっとする。訓練への姿勢は悪くないがいくらなんでも豪快すぎだ。とっさににブレードを取り上げる。
「兵長?」
「・・・」
取り上げたはいいがどうすればいいか分からない。理由をとってつけようにもまさか綺麗なのにもったいない、などとこっ恥ずかしいことが言えるはずなく。
「使え」
「え・・・」