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□mask
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それは単に好奇心だった。
「何だそのナリは」
「…」
執務を終え明日の訓練の内容を思案しながら気に入りの紅茶を飲む為に給湯室へと向かっていたら前方から足音が。既に就寝している兵士が多いこの時間に一体誰だと目を凝らせばそれは女のものであり自分の部下である事がわかった。
立体機動を装備している事から自主的に訓練をしていたのだろう。それ事態は感心な事ではあるがあちこち傷だらけだった。
見た所軽い擦過傷ばかりで大した事はなさそうだが小さな傷が脅威となる事もある。
「チッ…面倒だが手当てしてやる。来い」
「いえ、結構です」
「…あ?」
そうぶっきらぼうに言い放たれ一瞬呆気にとられる。
別に職権を振りかざすわけではないが上官がわざわざ申し出てるというのに。
しかしよく考えればこの女、なまえはいつもそうだ。
なまえに愛想というものは皆無だった。
何をするにも常に無表情。成果を上げそれを誉めたとしても喜ぶ素振りなど一切見せない。
決してそうしろと言ってる訳ではない。ただ単に不思議だった。
兵士といえどまだ若い女だ。