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□贈り物
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覚えてるか?お前がなんの前触れもなく俺にバケツ一杯の水をぶっ掛けやがった日の事を。
その理由を聞けば俺が泣いていると思ったから、兵士長が泣いているだなんて事が知れたら兵士達の士気に関わるから、それをごまかそうと思った、と。
俺はただあくびを噛み殺していただけだったってのに。
そういったらなんの詫びれもなくへらへら笑いやがった。


「あは、そんな事もあったねぇ」


「あったねぇじゃねぇよ。お前じゃなかった削いでた」


「・・・」


「大体お前はいつもそうだ」


「・・・」


「衝動的に行動するからこんな事に・・・おい、なまえ、聞いてんのか」


「うん、聞いてる聞いてる、それより雨降りそうだね。ちょっと寒い」


空を見上げれば確かに一雨きそうだった。寒いと抜かすなまえをマントでくるんでやればふにゃりと笑い擦り寄ってきた。そんな子猫のような仕草に無意識のうちに頬が緩む。


「あったかい、それにリヴァイの匂いだ」


「俺のだから当たり前だ」


「リヴァイの匂いって安心する、眠くなっちゃう」


「じゃあ返せ」


「えー、やだ、なんで?」


「ばかいえ、ここは壁外だぞ。こんな所で寝る奴があるか」


「…」


「おい」


「・・・」


「…おいなまえ」


「・・・」


「・・・寝るななまえ」


「起きてる起きてる、ふふ、そんな怖い顔しないでよ」


華奢な手が俺の頭を撫でる。そういえばしょっちゅうこうして撫でられていたな。本来なら他人に触れられる事はもちろん、頭を撫でられるなんざ絶対に許さない。
だが一度もそれを振り払うことはしなかった。そうしないどころか心地よいとすら感じていたのだからやはりなまえは俺にとって特別な存在であった事を改めて認識する。


「ねぇリヴァイ、リヴァイの淹れた紅茶が飲みたい。あの一番高いやつ」


「図々しい野郎だな。まぁ・・・最近随分頑張っていたようだから褒美に飲ませてやってもいい」


「・・・」


「・・・おい」


「・・・」


「・・・そういえばこの前お前の好きそうな菓子をもらったんだった」


「え?ちょうだい」


「はっ、現金なやつ」


「…」


「…」


「…」


「・・・なまえ」


「・・・」


「痛ぇか?」


「・・・ううん、大丈夫、もう痛くないよ。でもやっぱり寒い」


「・・・そうか」


小刻みに震える体をしっかりと胸に抱く。その体はやっぱり華奢でよくこれで兵士が務まるものだといつも関心させられていた。だが確かに感じる温もり、優しい香りはいつだって俺に安心を与えてくれるもので生きていることを実感させてくれていた。



「ねぇリヴァイ」


「なんだ?」


「だいすきだよ」


「知ってる」


「あのねリヴァイ」


「なんだ?」


「わたし幸せだったよ」


「そりゃよかった」


「ありがとねリヴァイ」


「高ェからな」


「・・・」


「・・・」


「・・・」


「・・・なまえ」


「・・・」


「おいなまえ」


「・・・」


「寝るんじゃねぇ」


「・・・」


「起きろ」


「・・・」


「紅茶飲むんだろ?」


「・・・」


「菓子いらねぇのか?」


「・・・」


「起きろといっているだろ」


「・・・」


「命令だ、起きろ」


「・・・」


「テメェ・・・自分だけ言いたい事言って満足してんじゃねぇよ」


「・・・」


「なぁなまえ」


「・・・」


「なまえ」


「・・・」


「頼むから」


「・・・」


「目を開けてくれ」


「・・・」


「なまえ」


「・・・」


「っ、なまえ!!」


「・・・」


「・・・」


「・・・」


「・・・愛してる」




























降り注ぐこの雨はきっとお前からの最後の贈り物

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