book
□最強につき
1ページ/3ページ
腕相撲がめっぽう強い女性兵士がいる。屈強な男性兵士が立ち代わり入れ替わり挑戦するも勝ったものは誰1人としていない。
リヴァイはそんな噂を耳にした。一体どんな女だと思っていたらその人物の正体は自分の班の部下であるなまえとの事。
おかしな話だと思った。
なまえは巨人を削ぐ技術は高いが華奢な体つきで腕力は並。
そんな彼女が?
そんな事を考えながら遅い夕食をとるために食堂へとやってくれば人の気配。
一般兵士の夕食の時間はとっくに過ぎたというのにある一角に人だかりが。
一体なんだとその中心を覗けばなまえが自身より一回りも二回りも体格差のある兵士と例の噂の腕相撲をしていた。
「わーい!勝ったぁー!」
「おー!さすがなまえ!」
なまえの勝利により周りから歓声が上がる。リヴァイは理解した。
今の勝負、どう見ても八百長だ。しかしそれに気付かないなまえは弾けんばかりの笑顔。その笑顔に男達は完全に鼻の下を伸ばしている。
少し考えれば分かりそうなものを、そんな純粋さも合間ってかこの姿を見たいがための茶番だろう。
悪く言えば単純馬鹿。特別班の人間だというのにそれは大丈夫なのかと少々の不安を覚える。だがしかしこの屈託のない笑顔は確かに悪くない。
「随分楽しそうじゃねぇか」
「え?あ、リヴァイ兵長!!」
リヴァイの存在に気付いた兵士達が一斉に敬礼をする。それを制し和の中心にいるなまえの元に歩み寄りじっと見つめれば不思議そうにぱちぱちと瞬きをした。
「今の勝負を見ていたがお前…なまえよ。やるじゃねぇか」
リヴァイの言葉に兵士達は顔をひきつらせた。兵士長ともあろう人物がこの茶番の意味をを知り得ない筈などない。それを咎められるだけならまだしも、純粋ななまえに真相を知られてしまえば酷く傷付く事は間違いないだろう。そんな心境など知るよしもないなまえはぱっと花を咲かせたようにそれはそれは嬉しそうに笑った。
「ありがとうございます、訓練の甲斐がありました!」
どんな制裁でも甘んじて受けるからどうかなまえに悟らせないでくれと兵士達は必死に願う。だが驚いた事にリヴァイはそれらを咎める事も真相を打ち明ける事もせずある事を提案した。
「なまえ、おれと勝負だ」