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□チューベローズ
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心臓を捧げた兵士である以上、時に残酷な選択を強いられる事はある。
分かっていたはずなのに心と体を切り離すことができず招いた結果に己の未熟さを恥じ、そしてかつてないほど悔いた。
「リヴァイ兵長、なまえです」
「入れ」
入室の許可をとり扉を開けば鼻を鉄のにおいが掠め、部屋の主であるリヴァイが包帯だらけの痛々しい姿でベッドヘッドに背を預けていた。
「…っ」
その姿を目にして目頭が熱くなる。
人類最強の負傷。それは全て自分に責任があると理解していたからだ。
今回の壁外調査で新兵が巨人の脅威に囚われた時。圧倒的に不利な状況にもかかわらず周りの兵士の制止を振り切り救出すべく飛び込んでいった。
その結果新兵を離脱させる事には成功したもの、戦場において思い道理に事が運ぶ事などそうある筈もなくすかさず迫る新たな脅威。
体制を立て直す時間がなく死を覚悟し目をきつく閉じる。
メキメキと骨の軋む嫌な音。
だが不思議な事に痛みはまったく感じない。死を覚悟した際はそういうものなのかとうっすらと目を開けばそこのは巨人の手の中で苦痛に顔を歪めるリヴァイの姿。
彼が身を挺して自分を守った事は明らかで血の気が引いていくのがわかった。
その後、駆けつけた増援により帰還する事は叶ったが代償はあまりにも大きかった。
「本当に…申し訳ありませんでした…」
「全くだな。不必要な感情のせいでこのザマだ」
「…っ」
いい訳する気はない、する資格もない。リヴァイの言葉が胸に突き刺さる。溢れそうになる涙を堪える為に唇をかみ締め硬く拳を握った。
「全て、っ、わたしの責任です…」
兵団の主戦力の負傷は人類にとって大きな損害である事は明白だ。自分一人でその穴を埋める事などできる筈がない事もわかっている。いかなる処罰も受け入れる覚悟はできている意思を言葉を詰まらせながら述べリヴァイの返答を待った。
「そうか。だったら」
「っ!!」
胸倉を引かれ前のめりになる。殴られる、と、訪れるであろう痛みを想像し体をこわばらせれば視界がぐるりと反転し目の前には鋭い眼光を放つリヴァイの顔が。
「ヤらせろ」
「っ!?」
馬乗りになられている事を理解し地を這うような声が鼓膜に届いた瞬間ブラウスを一気に引き裂かれボタンが飛び散った。反射的にあらわになった体を隠そうと腕を交差させるがすぐさま頭上で一纏めにされる。
「痛ェんだよ。こうでもしねぇと気が狂っちまいそうなくらいにな」
「…っ」