book
□1
1ページ/3ページ
風呂から上がりよく冷えたビールを手に取った時だった。
静まり返った部屋に訪問者を知らせるインターフォンの音が鳴り響く。こんな時間に一体誰だと備え付けられたカメラを確認すればよく知った女、幼馴染のなまえの姿が。
「リヴァイ!開けて!早く!」
インターフォンを狂ったように押し鳴らし必死の形相でドアを叩く。
ただならぬ事態が起こっているのかと慌ててチェーンを外しドアを開き勢いよくなだれ込んできた体をキャッチ。
「おいなまえ、何があっ、」
「どいて!!」
「っ、おい!?」
腕からすり抜けるなり俺を突き飛ばすようにしてリビングへ続く廊下をばたばたと走り抜けていく。分けがわからず後を追えばテレビのリモコンを手に取り電源ボタンを押した。
「そ、そんなぁ…」
テレビ画面に映し出されたエンドロールを見るなりまるでこの世の終わりのような顔をしたなまえがその場に崩れ落ちる。
「…おいなまえ、これはどう言う状況だ」
大体の察しはつくもの若干顔を引きつらせながらそう問えば案の定、実にくだらない答えが返ってきた。
「このドラマ今日が最終回だったんだよ!!録画するの忘れてしかも今日に限って残業でタクシーも捕まらなくてせめて結末だけでもと思って一番近いリヴァイの家にきたけどリヴァイがさっさと開けてくれないせいでそれすらも叶わなかったそうだよリヴァイが悪いんだよリヴァイのせいだよばかばかアホー、アホー!リヴァイのばかぁぁぁぁ!!!」
「……」
貴重なリラックスタイムを下らない理由でぶち壊しにしてくれたのは一万歩譲って目をつぶってやる。だが録画し忘れだの残業だのタクシーがつかまらなかったのだのどう考えても俺に非はなく責任転嫁したうえに俺を罵りやがったのはいただけない。
「いたたたたた!!!」
「誰がバカだって?誰がアホだって?あァ?どう考えても悪いのはテメェじゃねぇか」
頭を鷲掴みにしギリギリと力を込めれば逃れようともがくが俺の力に敵う筈はない。
「足りねぇ脳ミソでよく考えろ。こんな時間に何の連絡も無しに押し掛けてギャギャー騒ぎやがって近所迷惑もいいところだ。なぁ…なまえよ。悪いのは本当に俺か?」
「いたたた!いたい!ごめん、ごめんってば!わたしが悪いです!だから離してってば!!」
「フン、分かりゃいい」
理解したようなので手を離せば頭をさすりながら涙目で睨んでくる。ちっとも怖くないが。
「もう!脳ミソ飛び出たらどうすんのこの馬鹿力!!」
「大して力入れてねぇよ。おかわりいるか?」
「け、結構です!」
後退りするなまえを尻目にすっかり温くなったビールを冷蔵庫に戻し冷えている方を取り出す。