双頭の一翼(ホメロス救済夢)
□光の射す場所へ
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ホメロスが光の眩しさに目を開けると、横にいるはずのエトワールの姿が見当たらなかった。
気怠い身体をゆっくりと起こすと、既に窓が開いており、ピカピカに磨かれた鎧が部屋の隅に用意されていた。
テーブルの上には、ホメロスの髪留めと、エトワールに貸し出した物が一緒に置かれていた。
まるで、昨晩の出来事が夢であったかの様に、いつも通りの朝だ。
「ホメロス様」
扉を叩く音が聞こえた。適当に返事をすると、きっちりとメイド服を着たエトワールが、朝食のプレートを持って現れた。
「そろそろお目覚めになって下さい。今日は九時から軍議だそうですね」
「......身体の調子はどうだ?」
ホメロスは、ゆっくり起き上がりながら訊ねた。エトワールは、テーブルにプレートを置いてピクリと肩を震わせた。
「問題ありません」
「そうか。......お前は食事を済ませたのか?」
「はい。......実は、本日の軍議に私も呼ばれているのです。デルカダール王直々に、声を掛けてくださって。あの、ホメロス様」
エトワールは、メイド服の裾を少し持ち上げてみせた。
「制服と、私服、どちらでお仕えした方が宜しいですか? 私としては、この服ですと、どうしても身動きが取り辛いものでーー」
「私服で構わん。......身支度も食事も一人で出来る。お前は軍議の時間まで部屋に戻っていろ」
「畏まりました」
エトワールは、余計な感情の機微を一切見せず、頭を下げると扉へ向かった。
「待て」
ホメロスは、反射的に引き止めていた。なんと言葉を掛けるか悩んだが、瞬間、テーブルの上に置かれた髪留めに気が付いた。
彼はそれを、エトワールへ差し出した。
「これで髪を纏めろ。それから」
ホメロスは、エトワールの手首を掴み、腰を抱き寄せた。
「少しくらいは、昨夜の余韻に浸っても良いと思うのだが」