双頭の一翼(ホメロス救済夢)
□休日
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久々に出た外の世界は、余りにも明るく、彼女は数秒目を瞑ってしまった。春の日差しが心地よく全身を包み込む。
まず最初に向かったのは、テラスのあるカフェ。そこで一番安いサンドウィッチと、紅茶を頼んで、暫し庶民としてのひと時を味わった。
30分ほどのんびりした後、今度は洋装店へ入った。
「こんにちは、クラウスさん」
馴染みの主人に話し掛けると、彼は作業をやめて破顔した。
「エトワールちゃん! 随分久しぶりじゃないか!!」
「ええ。お久しぶりです。これから、私服でお仕事をする事が増えそうなので、何かしっかりしたものを揃えたくって」
「それだったら、あんたにピッタリの品があるよ!」
店主は店の奥に引っ込み、数秒経たずして、ヒョコヒョコ戻って来た。
「これなんだ。見てくれよ」
彼は白いローブを広げた。金糸で、デルカダールの双頭の鷲が刺繍されていた。
「素敵ね......。まるでホメロス将軍の甲冑の様だわ!」
エトワールはそっと手に取り、驚いて目を見開いた。
「不思議。何か魔法がかかっているみたい!」