大切なモノ

□決意
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「俺なら」

ククールは、アンジェリカを押し倒し、真っ直ぐ言葉を続ける。

「俺なら、あんたに手を汚させたりしない! 側で守ってやれる。......だから、俺にしろよ」

今、彼が組み敷いているアンジェリカは、儚く、頼りなく、世界で一番美しいと思える少女だった。

「兄貴と違って、サディストじゃない。優しく出来る」

「やめーー」

拒絶の言葉を溢しかけた唇を、ククールは強引に奪った。アンジェリカは暴れて抵抗したが、それでも彼を気遣って、左腕は全く動かせずにいた。

そんな彼女の優しさに、ククールは心を掴まれて、どうしようもないもどかしさに捕らわれた。

「嫌なら、本気で抵抗しろよ」

耳元で挑発する様に囁くと、アンジェリカの腕が腰にのびた。短剣を引き抜き、その切っ先をククールの背へと向ける。しかし、その手は震えていた。

「あんたには出来ない。本当は、人を殺すことなんて出来ないって知ってる」

「ククール。貴方が本気なのは分かったわ」

アンジェリカは、ガタガタと震えながら囁き返した。人を刺した時の、鈍く重い感触は、忘れようも無い。

「でも、私も本気なの!!」

瞬間、ククールは全身が粟立つのを感じた。アンジェリカの真意が漸く見えたのだ。

「よせ!!!」

彼が動くのと、幌の幕が開くのは同時だった。

「ククール!!」

エイトの鋭く厳しい声、金属が木に突き刺さるくぐもった音。一気に三人が動き、空気が凍り付いた。
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