ロリポップメラゾーマ

□04.行方不明な私。
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慌ただしく扉を開けた。
誰もいない家。変えられていない花瓶の花。
ベッドに被る汚れ。掃除されていない床。

唯一違うのは、割れたマグカップ。

それを見てしゃがみこんだ。
何もする気が起きなくなる。

クロノスが静かに暮らしていた小屋。
誰もいないことはあり得るが、掃除されていないなどあり得ない。

マルチェロが毎日来ている限り。

異常事態を知らせる小屋。
二人が遠出したのではない。
マグカップが教えてくれている。

いなくなってしまったのだ。

「うそよ・・・・・・兄さん、どうしたらいいの!!」

ゼシカは泣き崩れそうになる。
それでもキメラの翼を握りしめ、移動を始める。
まだいくべき場所がある。
ゼシカはパルミドから走り出した。

ヤンガスに会いに、ゲルダに会いにいく。
走り続けることには慣れた。
でも一人は慣れていない。

ゼシカはまた慌ただしく扉を開けた。
中で驚くゲルダとヤンガス。
顔色の悪いゼシカを見て、水を持ちながら駆け寄った。

「どうしたんだい!?
エイトに浮気でもされたかい?」

「・・・よかった、いた!!」

それを聞いて異常事態に気づく二人。
真っ青なゼシカは水を飲みながら息をつく。

「あの人が・・・エイトが・・・・・・
帰ってこないの!!」

「は?
あいつが帰らない?ルーラで帰宅出来るんだから迷子じゃないだろ?」

「兄貴に限って浮気はないでやす!!」

「実はかれこれ1週間なのよ。
ククールに会いに行くって言ってそれきり。」

ククールという名前に反応した二人。
しかも顔つきがかなり怪しくなる。
浮気を疑う顔つきではない。

「不安で・・・クロノスに会いに行こうとしたから・・・・・・
いないの!!家の様子からマルチェロまでいない!!
これでククールまでいなかったから、どうすれば・・・・・・」

ゼシカが泣くのを見ているゲルダは、
言い出しにくそうに口を開けた。

「あのさ・・・実は聞いた話なんだが、
ククールも行方不明らしいんだ。
しかも1週間前から。」

「えっ・・・・・・」

「夜中に消えたらしいんだ。
酒場に行けなくて文句を言っていたから抜け出したんだって言われてたんだが・・・・・・
1週間は長すぎる。もしかしてこの事件は同じなんじゃないのかい?」

一人の女性の泣き声は響かない。
この世界のすべては包めない。
声は小さくて脆すぎる。
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