黒を纏う聖堂騎士団員

□7.道化師という心
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寝不足はお肌の天敵ですよ。
ククールが言うと腹が立ちますがいいんです、クロノスは。
女性ですから。
しかし、クロノスは寝不足では寝過ぎたようで頭が痛いようです。

「あはは〜
ククールいないし。ドニの町か?
またいきやがって、いい加減にしないと怒るがな。」

クロノスは顔を洗いに行こうと部屋を出ました。
すると窓からマルチェロに追い出された旅人が見えます。
バンダナをした青年、ツインテールの女性、悪い人にしかみえない男三人でした。
その中で、バンダナの青年と目が合いました。
営業スマイルで笑う青年を普通に無視して、階段を下がりました。

「旅か。いいな、それも」




ククールの帰宅を待つクロノスでしたが、なんだか不愉快な話が飛んできます。
ククールが指輪を無くしてマルチェロに叱られているとか。
怒りより呆れて自室に戻ろうと階段に向かう途中・・・・・・














ズキッ!!!









まるでそうな音がしたように激しい頭痛がクロノスを襲いました。
頭を押さえながらクロノスは、振り返らなければならない気がして後ろを見ました。
そこには道化師の姿がありました。
嫌な予感がするなか、クロノスはあまりの頭痛に部屋に戻ります。
ベッドに這いつくばるように寝込む彼女はそのまま眠りに落ちていきました。




次にクロノスが目を覚ました時はやけに修道院内が静かでした。
額に乗せられたタオルを退かした彼女は、誰かが看病していた痕跡を見ましたが、
まさかマルチェロだなんて考えてもしませんでした。
嫌な予感を胸に館の方まで走りました。
冷や汗なのか、頭痛の際の汗か、訳がわからないまま走ります。
そして燃える館を目にしました。

(焼け落ちた橋・・・開いた扉・・・・・・
まさかマルチェロは中にいるのか。
ならククールも中にいるはずだ。)

泳いででも渡ろうとしたクロノスは、
ククールが館から顔を出したのを見て察しました。
沈んだ顔を見せる彼にクロノスは叫ぶように言いました。
それは本心からの台詞です。

「お前のせいじゃないからな!!」

唇を噛みながら、責めていたのはマルチェロへでした。
プライドと自信家だけのマルチェロと決めつけた八つ当たりに過ぎません。
それは彼女も理解しています。
でも責めたかったのです。

(どんなに嫌でもククール兄なんだ。
血じゃなくて縁は繋がってしまったんだ。
弟ククールの前で院長を死なせるなんて・・・馬鹿め)

けしてマルチェロの気持ちを考えていなかった訳ではありません。
考えていてなお責めるのです。
これ以上は責めても仕方がないと感じたクロノスは、燃える館に頭を下げました。
そして誰にも聞こえない小さな声で呟きます。

「オディロ院長、お世話になりました。
女である私がここにいても仕方ありません。
貴方がいない修道院にいる自信もありませんから」

そうして館に背を向けました。
二度と見ることもないであろう館に背を向けました。



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