ロリポップメラゾーマ

□16.錆びれた鍵
1ページ/2ページ

「兄貴が起きてませんよーに」

寝てしまったユウコをおんぶしているオレは、家のまえで立ち尽くした。
空気を読んだんだから、兄貴がオレに怒る筋合いはないなど思う。
しかし、ユウコという小さい子を連れ回したのだから殺されてしまうだろう。
現在明朝4時。
さすがに寝ていると思いたい。
30過ぎなんだから足腰の負担により寝ていればいいんだ。

「貴様なにしている。」

いきなり玄関が開いた。

「うわ・・・・・・なんで起きてるんだよ」

率直に本音を言ってしまった。
これは刻まれて闇に葬られるパターンだと確信した。
しかし、あの兄貴がオレに冷たい目をせずに家に上がらせてくれたのだ!!
あり得ない。あり得ないけどあり得ない。
なぜオレは今生きているんだ。
よく考えればユウコがいるから刻めないんだ。

「ユウコをそこに寝かせろ。」

マルチェロが自分の布団を指差した。
クロノスが二階で寝ているのだろう。
言われたように寝かせると、珍しく兄貴がアルコールを開けている。
しかもワイン。
兄貴はオレに座れと無言の指示をした。
毒入りワインに違いない。

「な、なんでしょうか。」

「暇だから付き合え」

「・・・・・・なあ、兄貴。」

「なんだ」

「兄貴が優しすぎて怖い」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

また地雷を踏んでみる。
兄貴が優しすぎて怖いから、怒らせた方がいい気がしたんだ。
しかし、兄貴は怒らない。
オレは精神的に死に続けるらしい。

「近所迷惑だろう。」

「でもさ、優しすぎてワインの味がわからない」

「舌が馬鹿だからだろう。
無駄に飲みまくるから」

「はぁ。すでに飲んだんだよ、兄貴」

「ユウコの前でか」

そうだ、だからキレてくれないか。
さあキレるんだ、兄貴!!

「ふん、相変わらずだな」

兄貴がいきなり丸くなった。
大人の階段を上ったからか。
オレのこの気持ちはなんだろう。

「貴様、この鍵についてどう思う」

いきなり話題を変えた兄貴。
出してきたのは錆びれた鍵だった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ