ロリポップメラゾーマ

□08.歌に想いを乗せて
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うわ、オレさ、初めて魚を生で食べた。
ユウが魚を生で食べれるっていうから、兄貴が張りきって刺身とやらにしやがった。
今度は寿司とやらにするかもしれない。
生魚って臭いな。
特に光り物は嫌だな。


この世界に来て長いような感覚だ。
実際は短すぎる時間なんだが、体感はかなり違うらしい。
楽しんでいるのか、帰りたいのか、オレはすでにわからなくなっている。
人の心は水だ。流れている。
オレもまた人だ。

終わった一日。
オレは布団の中で寝れずにいた。
寝ないと。明日はジュレットの町で情報を集めにいかないといけない。
体力をつけないといけないな。
ユウが体力が極端にない上に弱いから、守ってやらないと。

オレは目を瞑ろうとしていた。
妨害した声にオレは好奇心を抱いた。
歌が聞こえる。ユウの声だ。

知らない歌。
あいつの世界の歌なんだろう。
歌詞は・・・・・・暗いな。
トラウマになる人がいそうな歌だ。

とりあえず外に出てみた。
ユウは空を見ながら歌っていた。
こいつ、多分黙っていればおとなしいやつだ。

「寝ないと体力続かないぞ。
それとも、オレが添い寝して」

「うざい。
・・・・・・あ、ククールか。」

「さらっと言ったな。」

「ごめんなさい。年上だって忘れていたんだ」

「・・・・・・あ、そ。」

こいつ、女じゃなかったらどうしてくれようか。
でも、まあ元気ならいいんだ。
この世界に来て不安だろうし。知り合いがいない世界はキツいからな。

「その歌はなんだ?元の世界の歌か?」

「うん。『月千一夜』っていうの。
ゲーム曲で古いやつだから知らない人の方が多いかな。
でも好きな歌。楽園は蜃気楼って歌なんだよ」

「お前な、まだまだこれからなんだから、夢のある歌を歌え。
兄貴が言うなら説得力あるけど」

「なんで?」

「兄貴はメイドの子でさ、親父に捨てられて母親には自殺されて・・・・・・
オレとは腹違いの兄弟で同じ場所で聖堂騎士団員で・・・・・・
楽園なんか夢のまた夢だろ。
今の空間を兄貴が楽園とまでは言わなくても・・・
幸せと感じていればいいんだが」

うわ、語ってるオレ。ちょー恥ずかしい。
言われてみると、オレってあんまり語らないタイプだな。
語ってるオレ恥ずかしいとか、それこそ恥ずかしいな。

「マルチェロさん、多分今のところ幸せなんじゃない?
今、ククールがそう言えるなら。

はぁ・・・話してたら眠くなってきた。寝よう。」

ユウは立ち上がり家に入ってしまう。

それにしても、今オレがそう言えるなら幸せ、か。
幸せって思われているならいいのかもな。
でも、オレの幸せってなんだ。
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