ロリポップメラゾーマ

□07.運命の振り子と悪夢の始まり
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とある城の一角。
オーガの女賢者が自室で休んでいた。
休んでいたというのは正確ではない。
結晶を通して、ある人物と会話をしていた。
同じく賢者である。
賢者ホーローの話を聞きながら女賢者ルシェンダは、左手にあるものをせわしなくいじっていた。
焦り、緊張、不安のあらわれである。

賢者のものたち、予知夢を見るものたち、それぞれなにを感じているか。
フェイトの書の白紙化による未来予知への影響。
全世界の魔物暴走化。
ありとあらゆる異変が生じている。

ルシェンダは自室の扉の前に誰か来ていることに気づいた。
しかも城の兵士ではない。
杖を握り警戒した。

ノックなしで入る無礼者はバンダナをした青年だった。
はじめから戦う気なのか、槍をすでに手にしている。
いや、すでに戦ったあとなのかもしれない。

「素直に言います。
あなたが手にしている振り子をください。
そうしたら戦いませんから。」

ルシェンダは『運命の振り子』をしまおうとした。
それより青年の方が速かった。
腰につけていたブーメランを投げて、ルシェンダの左手に当ててみせた。

明らかにブーメランを使いなれている。
ルシェンダは床に転がる振り子に手を伸ばす。
槍で刺し殺そうとする青年を杖で殴る。
殴られながらも足で振り子を蹴り飛ばした青年。
振り子が宙を舞う。

槍の持ち手で鳩尾を殴る青年と倒れるルシェンダ。
その音に結晶を通して連絡をしていた賢者ホーローが反応した。

「ルシェンダ様!?」

青年は槍で結晶を飛ばした。
飛んだ結晶は壁にぶつかり砕け、ルシェンダに降りかかる。
その間に青年は振り子を拾うため、身を屈めた。
ルシェンダに背を向けていた青年は、彼女の蹴りに気づかなかった。
多少飛んで床に転がる青年。

「さすがオーガ。差別する気はないけどね。
200歳越え老女には負けられないよ!!ジゴスパーク!!」

地獄からの雷に仕返しにメラゾーマを飛ばしてきたルシェンダ。

「なら年下に負けてられない」

「・・・・・・」

口から出た血を拭く青年。
振り子はいまだに床の上。

はやぶさ斬りで迫る青年とバギクロスをぶつかる。
殺意のないルシェンダの攻撃に青年は怯んだ。
いや、躊躇ったのだ。
バギクロスの殺傷能力を知るなら飛び込んで来そうなものだが。
歯を食い縛る青年は全力のギガデインを放った。
悲しみ、怒り、憎しみで増幅された魔法。
そして彼は動けなくなかったルシェンダを一瞥もせず振り子を手にした。

それでもなお動けない体を立ち上がらせるルシェンダ。
青年は気にもせず歩き始めた。
彼には殺せない理由がある。

「これ以上闇に堕ちたら戻れないぞ」

「・・・・・・
そのときはそのとき。これが僕の選択だから。
後悔なんてしない。」
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