The uncertainty of the future

□07.雪に包まれる学校
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学校に戻った柊沢は参っていた。
夢中で学校を飛び出したおかげで合言葉を知らない。
学校に入れないまま途方に暮れていた。
校門をよじ登る手も見張りを倒す手もある。
やらない方が身のためだろうが。
仕方なくため息をついた。そこに鳴海が現れた。
学校には入れているようで校門越しの会話になる。

「やっぱりな〜南条が迎えに行けって言ってたから。」

南条と聞いた柊沢は首をかしげた。
あのバカはバカ稲葉とともに女を置き去りしたのだから。
気づいた鳴海は首を振った。

「南条なら怪我で今保健室だ。
あ、見張りの生徒さん?柊沢を入れてくれない?
俺が困る」

負けるな、ピアスには。柊沢はそう感じた。
口喧嘩でもしたら負ける気がした。
ついでに言うと女の勘だが、きっとモテるんだろう。柊沢は女性にモテて仕方ないが。

開いた校門を潜り抜け、南条のいる保健室に向かう。
怪我を情けないと思うより、危ない事態を知らせに来た方が良い。
恐らく稲葉が危ない事態になっているのだろう。
悠長にはしていられなかった。

「あのさ、柊沢。
何を持ち歩いてるんだ?」
「・・・あ、忘れてた。雪の女王の仮面。見つけたんだ。
なんか札とかあってヤバそうだったが、まあいいだろ」
「確か冴子先生って雪の女王やったんだって?マジかな」
「聞いてみるか?」

悠長にはしていられないと言いながら、悠長な台詞を吐く。
不安に満ち溢れた学校内はやはり暗い。
不安やパニックは伝染するものだが、誰かが伝染を食い止めているらしい。
トラブルなどは目に入らない。
中庭で陽気な綾瀬とゆきの、冴子先生を見つけた。
どうやら全員無事らしい。当然稲葉の無事はわからないが。

「おめーら無事か。あんなゾンビだらけじゃあ、飯も不味いな」
「あんたこそ心配したんだから」
「柊沢とかマジイケメン過ぎ〜なんで女なわけ?」
「あれ、柊沢。あなた何を拾ってるの?」

冴子先生は雪の女王の仮面しか目に入らないらしい。
雪の女王をやった人だからか。噂に惑わされるからか。
仮面に惹かれているような冴子先生に不安を覚える。
仮面を手にした冴子先生はなんだか昔の思い出にフケている気がした。

「噂なんて嘘に決まってるでしょ」

柊沢は不安から確信に変わった。
しかし、仮面をつけようとする冴子先生を止めることは出来なかった。
雰囲気が変わり、体感温度が下がる気がする。いや、全体の気温が下がっている。
自然と身を構える体勢になった柊沢、そして鳴海がいた。
異質な雰囲気に気づいた鳴海は、雪の女王の噂が本当ではないか、と感じた。

「貴様!!俺らのセンコーをどこにやりやがった!!」
「冴子先生を返して欲しければ三つの塔を登ることだ」
「冴子先生、冗談はいい加減にしなよ」

ゆきの、綾瀬の混乱を放置して話が進む。
柊沢はゆきのと綾瀬を守ることで頭がいっぱいで話を聞いていない。
威嚇を通りすぎ殺気全開の柊沢を横に、鳴海は冷静に話を聞いていた。
しかし、雪の女王が学校を凍らせた途端、冷静さは吹き飛んでしまった。
柊沢が反射的にペルソナを召喚したのだった。
雪の女王の姿はなく、残されたのは鏡の無い鏡の枠と凍り付いた冴子先生。
壊れてしまっては冴子先生を助けるすべはなくなる。

「柊沢ストップ!!」
「・・・・・・!?
すまない。殺気が出てたな。」

殺気が捨てきれない柊沢はその場を離れた。
凍り付いた学校。不安とパニックの伝染。悪魔に魅いられた町。
問題は山積みだった。
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