The uncertainty of the future

□03.招待パーティー
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神取は嫌いだ。
南条はそう感じた。嫌いだと思うことは仕方ないが、不愉快な気分はどうしても拭えないものだ。
この招待パーティーが神取主催ではないだけ有難い話である。
ヒイラギグループ主催というのは南条にはどうでもよかった。神取でないだけマシだ。
何度もいうが神取でないならマシになるものだ。
この主催グループはダイヤモンド鉱山で成功し、今は薬品開発企業になっている。
評判も社長の人柄もよく、黒い噂が立つことは今のところない。
ただ一人娘が表に立ちパーティーに出ることがないことに関する憶測は、絶えない。
たとえ嫌とはいえ表に出ないのはまずいだろう、と南条は思う。
このパーティーにも来ていないのだろう。そう考えていた。

「南条家の南条圭・・・様ですか」

「・・・・・・?
はい、そうですが」

鼻に通り抜ける匂い。香水のようだ。
よくありがちな薔薇の匂いだが、かなり品なものらしい。
南条の目の前には黒い髪の美女がいた。
美女というのは一般的意見で、彼自身がそう感じたのではない。
薔薇が似合うのは確からしい。
山岡に誰だか尋ねようとしたが、気づけば傍から離れていた。

「申し訳ありませんが、貴女は・・・・・・」

「私は・・・じゅんと呼んでください。
巡ると書いてじゅんです。
よくメグと読み間違いを受けますわ」

巡から南条は必死に脳内検索した。
しかし聞き覚えがない。
このパーティーに招かれた人の中に名前で巡がつく人がいないのだ。
巡という女は微笑んで南条を見る。
これ以上尋ねることはマナー違反なような気がしてならない。

「ごめんなさい、暇で・・・同じぐらいの年齢の人と話がしたかったものですから。」

南条は何も言わなかった。
この美女が『同じぐらいの年齢』と言うので、老けてみられるのかと悲しんでいた。
そこに気づいた巡は首を振った。

「私は高校生よ」

「・・・・・・」

自分の勘違いに怒りを覚えたと同時に、巡の名字に気づくことができた。
ヒイラギグループの一人娘らしい。
今までパーティーに顔を出さなかった子だ。脳内検索で引っ掛からないわけだ。

「うふふ・・・ありがとう。
楽しかったわ」

「何もしてないがな」

巡はまた微笑んで、背を向けた。
南条の周辺にはまだ薔薇の匂いが残っていた。
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