長編

□縮まらない距離
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自室に戻ってベットに倒れこむ。



ああ・・・取られてしまうのか。誰のものになってしまうんだろうか



でもやっと

名無し

にも思ってもらえる人が現れたなら・・・僕なんてなんの個性も魅力もないから・・・







そろそろ

名無し

が帰ってくる頃だな・・・







僕は重い体を持ち上げて、カレーを作り始めた・







カレーがちょうどできたとき

名無し

は帰ってきた







「ただいま!!そうちゃん!!!」







あれ、と呟き鼻をくんくんさせている

名無し







「今日はカレーだね?」



壮五「そうだよ。おいしく出来てるといいけれど」



「そういえば壮ちゃん料理上手だもんね。私より女子力高いな」



壮五「そう・・・かな?」



「うん!!食べてもいい?」



壮五「どうぞ」







名無し

は身支度を整えると食卓に座りカレーを食べる







「う〜ん!!ほっぺた落ちそう」



壮五「そうかな?ありがとう」



「壮ちゃんはもっと自信をもって?みんなキラキラしてるけど壮ちゃんの輝きが少し足りない。あんなに歌も踊りもうまいんだから、自信を持って?」



壮五「でも・・・僕は本当にみんな見たいな個性がないから・・・良い意味で平凡。悪い意味で無の人間だから・・・」



「そうちゃん。大丈夫。きっとすぐに自身はつくよ!!もう少しでミュージックフェスタあるんでしょ?」



壮五「そうだね」



「その時、絶対輝く。大丈夫。あせらないで」







名無し

はいつも僕を元気づけてくれる。だから・・・すごくありがたい存在なんだ。







食べ終わって僕たちは深刻な問題にさしかかった。







「ベット、どうしよう」



壮五「それは僕がソファーに」



「だめだよ。押しかけてしまった私があれだからソファーは私が寝るよ?」



壮五「女の子をソファーに寝かせるわけにはいかないよ」



「いいのいいの。それとも・・・一緒に寝ちゃおうか」











その言葉に僕の顔は一気に赤面する。







壮五「そ、それはだめじゃないかな?お父様もお母様もきっとそれはダメというにきまっt」



「大丈夫。昔、一緒によく寝てくれてたじゃない」



壮五「それは、まだ僕たちは子供で・・・今は」



「今も昔も変わらないよ?」







変わってしまったのは、僕だけなんだね。



ノックアウト状態の僕はしばし言葉を失った。







その間に

名無し

はもう布団にもぐっていて







「う〜ん!!そうちゃんのにおい!!もっと男くさいかなって思ったけど柔軟剤のにおいがする」



壮五「しっかり洗たくしてるからね。って!!もう布団に入ってるし!!」



「だめ?一緒に寝ようよ。そうちゃん」



壮五「いや・・・僕はソファーに・・・」



「子守歌・・・また歌ってよ」



壮五「!!!」







子守唄は

名無し

がさみしい時怖い時いつも歌ってあげていた曲。

名無し

は一人のときが多かったからよく僕を家に呼んで隣に寝かされていた。







「ね?ダメかな?」







粘り強い交渉・・・







僕は意志が弱いのかな。鎖で縛っていた欲求がほどけてしまった。



壮五「じゃぁ寝付くまで隣にいる」



「うん。わかった」



ほほ笑む

名無し

。その表情は何かさみしげで、僕はそっと布団に入って

名無し

に寄り添った。







「うふふ。そうちゃん。大きくなったね。ベットが狭いや」



壮五「そりゃ僕だって大きくなるよ」







違う意味でも・・・さ・・・







「お互い成長しちゃったね。でもなんも変わらない。まだこうして一緒にいられる」











「でもいつか・・・変わってしまうときが来るのかな?それもちょっと怖いね」







名無し

は悲しげに微笑んだ。







そして照明に手を伸ばし。







「そしたら電気消すよー!!」







部屋は真っ暗になった。

名無し

がこっちに体を向けた。







「子守歌・・・お願い」







僕たちは向いあう形になっていた。顔がよく見えないけれど、きっと目と鼻の先に

名無し

がいるんだ







壮五「ん・・・歌うよ?」







小さな声で囁くように、小さい頃の行動が染みついていたのか、いつのまにか僕の手は彼女の頭を優しくなでていて







「そうちゃん・・・とってもきもちい。ありがとう」







その言葉と同時に

名無し

は眠りに就いたようだ。



本当に、警戒心がないというか、僕のことをどう見てるの?

名無し









壮五「好きだよ?でも・・・目の前にすると」







うまくアプローチできない。どうして他のみんなみたいに動けないのかな。







心臓が高鳴る。妙に切ない気持になって、徐々に

名無し

の額との距離が縮まる。僕の理性がすこし崩れて。



やっぱり耐えられなくて、彼女のおでこにそっとキスをした。







僕だって・・・男の子なんだよ?

名無し

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