おそ松さん夢
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鳴り響く電話。誰ひとりとして動かないいとこたち。
私は居間から離れ電話の方へ向かう
昔ながらの電話は重く感じ両手で受話器を握る
「もしもし松野です。」
スピーカー越しに聞こえたのはイチくんの声だった
「ちょっ、なんで茉莉が出るの。ほかの奴は?」
慌てて私以外の人を指名するイチくん。
「いや、私以外で動く人いる?じゅーくんかトドくんくらいじゃない?それよりどうしたの?早く帰っておいでよ。まだまだ寒いよ?」
「...たすけてほしい」
人と接することが苦手な彼が助けてと言った。私は耳を疑って聞いた。喉が上下し、息を吸い込む。
「ごめん。聞き間違いかも、助けてって聞こえた」
「だから、助けてほしいの。そうじゃないのにこんな事言わない。」
当たり前なことを言われてなんだか照れくさい。
「いとこ全員で?」
「人手は多い方がいいかも。ネコ探しだし。」
「は?ネコ?え、いや今日友達の様子見に行くって言ったじゃん」
「だから、友達がネコなの。あ...今引いたでしょ?血を分けた従兄弟がネコを友達宣言してるんだもんね。ゴミ以下だよ...。燃えないゴミ」
「いいからはやく帰ってきなよ。」
「だから...!」
私はそこで食い気味に告げた
「助けてほしいことを話し合おう。電話口じゃ100%伝えるのは難しいし、私が他の従兄弟たちに伝えるのはもっと難しい。」
「だから早く帰ってきなよ」
それだけ言って受話器を置く、言い逃げとは卑怯かもしれないが話だけ長引かせて要件は言わないつもりかもしれない
「電話だれー?」
おそくんの気の抜けた声が私を出迎えた
「イチくん。何かあったみたいだからこれから話し合いしよう。すぐ帰るように伝えたから」
そう言えば従兄弟たちは皆表情を固くする。それぞれ返事をし、イチくんが帰宅するのを待った。
「しかし、遅いね」
トドくんが口を開いた
私もそんな気はしていたが私は何も言わなかった。
「大富豪でもやる?」
おそくんの思考はどうなっているのかな?
彼からの衝撃の電話から30分後。引き戸が音を立てた。サンダルを脱ぐ音を確認し扉を私たちは見つめた
「...ただいま」
「うんおかえり。」
「待ってたぜ。マイブラザー」
「遅かったじゃん」
「一松兄さんおかえり!!」
「もう、茉莉ちゃんも心配してたんだからちゃんと帰ってきなよ」
「イチくんおかえり。話し合いしよう。」
全員がこくりと頷いた
緊張感が漂う空間の中で1人じゅーくんはやっぱりじゅーくんだった