おそ松さん夢

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「慶応ボーイとか嘘ついちゃダメだよ?君はあくまでも高卒の元ニート。どぅーゆーあんだーすたん?」

「茉莉ちゃん意外と発音下手だね...でも、そうでもしないとこの生活から脱出できなくて...。ニートじゃなくてアルバイターになったし、女の子と仲良くなって新品を卒業したいんだよ。」
また、新品という言葉、うーん。

「古いものより新しいものの方がいいと思うけどなぁ...ビンテージ物とか古着が好きなのかな?...わからないなぁ。」
好みは人それぞれ。悪くいう気はないですぞ。

「茉莉ちゃんって天使だねー。」
血が繋がってなければなと加えたトドくん。
「新品派とは茉莉もマニアックだな?」
指をパチリと鳴らしながら言うが痛い。

「いやいや、そんなことはいいからカラくんも就職しようね。定職が難しいならトドくんみたいにバイトでもいいから。」

「働かない我が人生 C'est la vie!」

「転がすぞ」

「茉莉ちゃん!?」
おっとキャラが崩壊。とにかく彼は最後まで実家に居着くつもりだろうか。

「聞き間違いだよ」
仕方ないいとこだね。

「じゃ、そろそろ休憩開けるから。カラ松兄さん、茉莉ちゃんをキチンとエスコートするんだよ?」

「off courseだトド松」

「じゃあね。後でねー。」
その場を後にしてこれから下宿先へ帰る。



「茉莉...少し俺のワガママに付き合わないか?」
サングラスをチラッとずらしながらカラくんは言うが、痛い。

「いいよ。トドくんに連絡入れとく。遅くなるわって。」
いとこの中でタブレット端末を所持してるのが彼である以上、簡単な連絡手段であるSNSでの連絡は私とトドくんの間のみだ。

「じゃあ行こうか」
何となく行くところは予想がついた

2人で昔ひみつ基地と言って遊んでいた廃ビルだろう。あそこから眺める夕日は格別だった
赤と青が混ざりあった空はとても綺麗だった。

息を吸い込めば春の匂い。お花見用にあたりに提灯が付けられているのを見るとここは都内なんだと思い知る

少し早めの花見客が酒を煽りシェーと一声。

「変な人...」
歩幅が合わない彼についていくのは大変だった

ときおり立ち止まってはくれるが彼とはコンパスが違う。
ぐぬぬ...ヤンおばさんになりたい


やっぱり...予想通り彼と私は廃ビルの前まで来た。
するとカラくんはポッケから鍵を取り出した

「鍵つけたの?資金源は?」
私はイヤミを付けながら質問した。

「ノープロブレムだぜ茉莉。この世には馬や玉、ボートに夢を乗せて走らせる競技がある」

「それギャンブルっていうよね?夢とか言ってるけど違うよね?」
ギャンブルが資金源ってのもなんだかなぁ。否定する気はないけど腑に落ちない

夕日が部屋の中まで射し込んでくる。眩しくて目が眩む


「また、こうして2人で過ごせたらいいのにな。2人だけで」
最後を強調した彼の私を見つめる瞳はひどく優しく慈しみを感じる。

「そんなこと思ってくれたんだね。カラくん...嬉しい」
昔2人でここで遊んだ日々を思い出す。
まるで真綿で包まれたような曖昧さ。

「迎えに行くのは俺の役目だったし、茉莉が長期の休みに来るのを楽しみにしてた。」

私は知らず知らずに持ってはいけない気持ちを持ち始めていたのかもしれない

「そうだね...あの時は楽しかった。私も夏休み、冬休み、春休み...全部楽しみだった。」

「...茉莉...いや、何でもない...」

「そっか」





そうして私たちはしばらく際限なく流れる時を感じ星が輝き始めたころ帰宅した。

いつの間にかポッケにあの秘密基地の鍵が入っていた。意味深なウィンクをするカラくん。

引き戸を開ければいとこたち。
皆がそれぞれおかえりと言ってくれる。
...あれ?4男がいないぞ。

その時玄関にある電話が音をたてたのだった。



02 春のせい。恋じゃない。
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