拝啓、愛しい貴方へ。

□第3話
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どくん……どくんと心臓が大きく音を立てる。

どうしよう……

ここでバレてしまったらわたしはどうなるの……?

地下の暗くて何もない冷たい牢獄に入れられて死ねない吸血鬼の私はそこで一生を過ごすの……?

そんなの嫌だ……私は、フェリド様の元に戻るまでは死ねないの。


『ゆっ……優く…「なーんてな!!!!人間の中に吸血鬼なんているわけねーよな!ワハハ!」

『へっ……?』

思わずぽかん……と空いた口が塞がらない。

「だってよ、あいつら目が赤いだろ?そんな奴俺見たことねーし。」

第一、人間の血吸わなきゃ生きていけねぇなら、俺らの中に何年も紛れこむのは難しいしな。

とペラペラと言葉を繋ぐ優君。

そこに運転していた君月くんが

「というかわざわざ敵だらけのとこに紛れ込む馬鹿がどこにいるんだよ。」


『ばっ馬鹿って……』

確かに否定はできないが……

私は好き好んでこの世界に来たわけじゃない。

生き延びるために出陣する度

いやいや吸血鬼を襲っては血をすすり殺す。

そんな行為を続けて今日まで生きてきたのだ。

フェリド様の血以外喉に通したくもなかったのだが、私が死んでしまっては元も子もない。


嫌な事を思い出し苦い顔をしていると、

前方に人影が見えた。

「おい、誰かいるぞ」

君月君がそう言うと優君は身を乗り出し前を向いた。

「っ!おい!君月そのまま轢け!!!!!!!!貴族だ!!!!!!!!」


『貴族!?!?』

思わずガバッと顔を上げる。

もしかして……フェリド様……?


そんなことを確認する前に車から引きずり出され強制的に外にでた。



もちろん貴族を車で轢けるわけなく、車はあっけもなく破壊され飛ばされた。



「全員戦闘準備!!!!!!!あの貴族を殺します!!!!!!!!」



全員が武器をとると、
貴族がこちらへ近づいてくる。



すると見覚えのある顔が見えた。


『クローリー様……』


第13位始祖クローリー・ユースフォードだ。




無理だ……私達がこの人に勝てるわけがない……


吸血鬼の私は治癒能力が高いし、
なんとかすれば死にはしないだろうが、人間のこの子達が挑んでも待つのは死だけだろう。


『シノアちゃん……ここは一旦ひいた方が……』


「できればそうしたいのは山々なのですが……ひこうにも相手が貴族なので逃げ切れるかどうか……」


なるほど……確かに全員無事に逃げ切れる保証はない。


どうするか……


そう思っているといつの間にか

クローリー様が私の目の前に来ていた。



「華!!!!!!!!」「華さん!!!!!!!!」

みんなが一斉にこちらを向く。


「あれ??君フェリド君のとこのじゃない????」

そう言われてはいと答えるやつがいるか。と心の中で突っ込む。

大声では答えられないため、


『はい……そうです。あの……クローリー様、訳あって私は今帝鬼軍にいて……私が吸血鬼なのは隠して貰えませんか……。』


「なにそれ?まさか君人間なんかに捕まっちゃったわけ?」

『しょうがないじゃないですか……武器持ってなかったんですよ。』


「そりゃかわいそうだね〜まぁフェリド君が君を探してたから一応報告しておくよ。」

『ありがとうございます……あっ……それと伝言をお願いしたいのですが……。』

「え〜?なに?あんまり長いのはやめてね。」

『はい。』


では……と周りに聞こえないようにボソリと伝える。

「はぁ……分かったよ。伝えておく。」

面倒だなぁと頭をかくクローリー様。


「おい!さっさと華から離れろ吸血鬼!!!!!!!!」

と私達の間に優君が切りかかってきた。

「おっと。」

とクローリー様はその剣を軽々と受け止める。


「くそっ!!!!!!!!まだまだ!!!!!!!!」

ともう1度切りかかろうとしたその時、


「クローリー様、第7位始祖様がお呼びです。」

とホーンさんとチェスちゃんが
現れた。


「くっ……貴族がまた2人も!!!!!!!!」

正確には4人ここにいるんですけどね……

「ん?あれ??あれれ?その子……」

と目を真ん丸にして私を見つめるチェスちゃん。

私は慌ててしーっ!と人差し指を口元に当てる。

そうするとチェスちゃんは

「あわわっ」

と口を抑える。


「ん?フェリド君が私を?それはまずいなぁ。」

チェス、ホーン、行くよ。と2人を連れて3人はどこかへ飛んでいってしまった。


「たっ……助かった……」

とその場に座り込むシノアちゃん。


「おい!!!!!!!!怪我はねぇのかよ華!」


すぐに駆けつけてくれる優君と与一君。



『うん。大丈夫だよ。』

と返すと、

「なんもしてこねぇとか……
変な吸血鬼だな。」


『あはは……そうだね。』





「とりあえず……皆さん今日のところは1度戻りましょう。」


と、私たちは戻った。
 

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