拝啓、愛しい貴方へ。
□第2章
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人間側の世界へ入り込んだ華は、
自身が吸血鬼である事を隠すために、常にマフラーをし続けた。
そして、
『あった……』
ポケットの中に入っていたフェリドのリボンで髪を、
フェリドと同じ髪型で結った。
フェリドの存在を少しでも近くで感じたい為、この髪型に華はした。
『フェリド様……私は絶対に貴方のもとへと戻ります……。』
だからいつかくるその時まで、
どうか私の事を忘れないで。
華は貴族の服から、与えられた人間の服に着替えた。
『なんだか締め付けるみたいで嫌だなぁ……。』
華が今まで身にまとっていた服は、フェリドが血を吸いやすいように、と肩と胸元が大きく開いたデザインだった。
しかし今の服は首も胸元もしっかりと布で覆われている。
前の服に慣れていた華はその服が窮屈に思えたのだ。
『マフラーも、人前では外さないようにしなきゃ……。』
牙も耳も見られたら終わりだ。
幸い、目が赤くない事だけは助かった。
『これからどうしよう……』
そう悩んでいたその時、
コンコンとドアを叩く音が聞こえた。