48

□優しい君へ
1ページ/1ページ

こんなにも小さいからだで誰かのために笑って泣いて、忙しい君に恋をした。







お姉さんたちに囲まれて、末っ子の時代からみなみのことを知ってる。
あのときは私もまだ高校を卒業したばかりでこの世界に飛び込んでしたっぱとして働いていたけど、今じゃAKB専属の古株のスタッフのひとり。
そりゃ大人になるよな。
いつからか外で甘える場所が少なくなったみなみ。
だからこそ、側で甘えさせてあげられる人になりたかった。
そんな私を受け入れてくれて甘えてくれるみなみを大切にしたい。
精一杯愛したい。
そう思ってる。


カタカタとパソコンを打ってる私の背中に引っ付いて離れようとしないみなみ。
いつものことだし、仕事の邪魔にはならないし、背中温かいし、ほっておいたらいつの間にか規則的な寝息が聞こえる。
パソコンを閉じても気づかないで寝たまま。
「みなみー終わったよ」
お腹にまわされた腕をほどきながら言うと絶対に寝てたのに、知ってる と返ってきた。
みなみのほうを見るとふにゃっと笑った。
そのオフ加減がなんともいとおしい。
「眠いならベッド行こう」
「ん」
素直なみなみの腕をひいてベッドに潜り込む。
向かい合って近づいて温かくして寝る。
「みなみ、おやすみ」
「ん、おやすみ」
ちゅ、と一瞬みなみの唇が私のおでこに触れる。
「今日、具合悪かったやろ?ムリしないでね」
よしよしと頭をなでてくれるみなみ。
あれ、何で知ってるんだろ?
たしかに今日はみなみたちの撮影の途中で貧血を起こして、こっそり休んでた。
でもこっそりだったから気づかれてないと思ったのに。
「何で知ってるの、って顔してる」
「だってみなみにバレてないと思った」
「恋人なめんなよ」
「ドヤ顔するなし」
ほっぺをつまむと気持ちいいくらいに柔らかい。
「でも、ありがとね」
みなみは優しい。
優しすぎるくらい優しい。
声を張り上げて怒るのも、全部みんなが好きだから。
不器用なとこもあるし、怒鳴ったあとに反省というか後悔というかよくわからないやつをひとりでしてるときもある。
それを全部ひっくるめて私は守りたい。
「みなみー」
「んー?」
半分夢のなかにいってたみなみに声をかけると返事をしてくれた。
「なんでもない」
「なんやそれ」
と、言いつつ笑ってる。
可愛いな、こいつ。

この笑顔をずっと見ていたい、
みなみを好きになったときからずっとそう思い続けてる。









2016.03.28

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ