土方夢小説
□距離
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山「副長ー!」
やっと土方に追いつく。
近「悪かったよトシ!そんなに怒らんでくれ。」
土「別に怒っちゃいねぇ。」
山「いや、怒ってるじゃないですか。眉間にシワが寄ってますよ!」
土「怒ってねえって言ってんだろ!」
土方は鬼の形相で山崎の胸ぐらを掴む。
山「ひいいい!」
沖「俺たちに怒ってるんじゃないですよね?」
山「え?」
沖「旦那と喫茶店の女が仲良くしてんのが胸糞悪い・・・そんなとこですかい?」
その言葉に山崎から手を離す。
土「・・・そんなんじゃねえ。」
近「トシ・・・。」
沖「何に踏みとどまってるのか知らねえが、人の姉上を少しでも理由にしてたら俺は・・・本気でお前をぶった斬る。」
土「・・・。」
沖「惚れた女が幸せになればいい・・・。それは逃げてるってのと同じ事ですぜ土方さん。」
沖田はそのまま一人歩いて行ってしまう。
山「副長・・・。」
土方は黙って歩き出す。
それから6日が経った。
土方は、沖田のセリフを思い出す。
土「っち。わかった風な口聞きやがって。」
しかし、痛いところをつかれたようだ。
土方は立ち上がり、外へと出て行く。
出て行く土方を見つめる沖田。
その口元は少し笑っているように見えた。
ピンポーン。
琴の家のベルが鳴る。
琴「はーい!」
戸を開けると、そこには土方がいた。
琴「ひ、土方さん。こんな夜にどうしたんですか?」
土「・・・先週はうちのもんが世話になった。」
琴「い、いいえ。私も飲ませすぎちゃったのが悪いですし。」
土「・・・。」
琴「・・・。」
静まり返る。
土「・・・お詫びに・・・飲みに行かないか?」
琴「え?」
土「明日は休みだろ?俺のおごりだ。」
微笑む土方。
琴「・・・準備して来ます!」
琴は嬉しそうに準備をする。
店に入り二人で乾杯をする。
土「乾杯。」
琴「乾杯!」
一気に酒を流し込む土方。
琴「そ、そんな一気に飲んで大丈夫ですか?」
土「・・・。」
琴「土方さん?」
土「・・・悪かった。」
琴「え?」
土「もう馴れ合うことはねぇなんて・・・言っちまって。」
琴「・・・それは仕方のないことです。だって、新撰組の方が犯人と仲良くしてたらおかしな話ですもの。」
土「いや、俺は・・・本当はお前を助けたかった。」
琴「・・・。」
土「証拠が見つからなくて・・・正直ホッとしたんだ。」
琴「土方さん。」
土「けど、それはお前にとって辛い道だったのかもしれない。そう思ったら、何をすればよかったのかわからなくなっちまってな。」
追加した酒をグビっと飲む。
土「・・・それに、たまたまお前が万事屋達と一緒にいるのを見たんだ。それを見て、お前を・・・琴を笑顔にするのは俺じゃねえ、天パ野郎だって勝手に決めつけてた。」
琴「・・・。」
土「それからどんどん俺は勝手に決めつけて・・・俺は・・・あいつをも言い訳にした。」
琴「あいつ?」
土「・・・昔、惚れた女がいた。総悟の姉貴だ。」
琴「そう、なんですか。」
土「だが、俺が逃げている間に・・・あの世に逝っちまってな。」
琴「えっ・・・。」
土「あいつも・・・幸せにできなかった俺に・・・琴を笑顔にさせる資格はねえって。」
琴「土方さん・・・。」
土「そしたら、総悟に言われたんだ。人の姉上を少しでも理由にしてたらぶった斬ってやるって・・・。悔しいが、あいつの言葉に救われた。だから、こうしてお前に会いに来たんだ。」
そう言ってお酒を飲み干す。
土「これからまた、琴のところに飯食いに行く。・・・いいか?」
琴「・・・はい!新しいマヨネーズ置いておきますね!」
そのセリフに微笑む土方。
二人は夜遅くまで盛り上がった。