土方夢小説
□喪失
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山「副長。重森 琴の観察報告書です。」
土「あぁ、ご苦労さん。」
山「特に怪しい動きはありませんでした。やっぱり父親を守りたいが為の虚言だったんじゃないですか?」
土「・・・そうかもな。」
山崎は暗い土方を心配しながらも部屋を出て行く。
土「・・・。」
しばらく黙って考え事をしていると、近藤が入ってくる。
近「おい、トシ。琴さんはどうだったんだ?」
土「・・・特に変わった事はなかったそうだ。」
そう言って報告書を近藤に渡す。
近「そうか・・・。これで重森組の事件は終止符ってわけだな。」
土「・・・。」
近「・・・いくら本人が自白しても、証拠がなければ逮捕はできん。目撃者もいない、足跡もない。形見の刀には襲撃の時の血痕しかない。人斬りに使ったという衣服もあると言っていたが、父親にたどり着くまで逮捕されるわけにはいかないと処分してしまった・・・。」
土「・・・。」
近「そんな言葉だけでは逮捕はできんのだ。」
土「・・・わかってるよ。」
近「それに、山崎が観察をしても何もなかった。人斬りをするわけでもなく、普通に店を営業していただけ。」
土「・・・。」
近「もう終わったんだ。あんまり悩むなよトシ。」
そう言って部屋を出て行く。
土「・・・くそ。」
土方はずっと悩んでいた。
あのまま逮捕すれば、琴があんなに悩み自殺行為をしないで済んだ。
しかし逮捕されれば、いくら仇のためとはいえ6人も殺せば死刑だ。
昔にも何かあると言っていたのも気になる。
頭の中で琴のことが駆け巡る。
土方は頭をゴシゴシとかいてタバコに火をつける。