土方夢小説
□喪失
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あれから2日後、土方が琴の店にやってくる。
土「まだ店開けてないのか。」
琴「・・・。」
カウンターに伏せている琴。
土「重森真二は妻の殺人容疑で御用になった。当時の殺し屋との手紙のやり取りが証拠だ。おそらく、今までの犯罪を積み重ねると・・・死刑だ。」
琴「・・・。」
土「だが、部下の殺人については証拠がない。自分がやったと言うが・・・おそらく虚言だろう。」
ゆっくりと顔を上げる。
琴「・・・土方さん・・・私・・・。」
土「・・・。」
琴「私が・・・私が殺したんです!!6人も・・・。」
土方は黙ってタバコに火をつける。
琴「1人目から4人目は江戸に来る前、5人目と6人目は江戸の路地裏で・・・それに、父のところへ・・・襲撃しに行った。だから・・・私を死刑にしてください!!」
土「・・・。」
琴「それに・・・昔だって色々・・・だから・・・。」
土「・・・殺された6人・・・調べてみると何人もの人間を脅し、殺した。あのままだったら被害が拡大していた。俺たちが見つけたとしても、殺していただろう。」
琴「だからって!!・・・殺していいわけじゃない・・・。」
琴は涙を流し両手で顔を塞ぐ。
琴「・・・私を死刑にしてください。」
涙を流しながら、まっすぐと土方の目を見る。
土「琴・・・。」
琴「・・・初めて名前呼んでくれましたね。」
そう言って微笑む。
土「・・・っち。」
右手の握りこぶしに力が入る。
土「・・・古屋組については、俺たちも追っていた組だ。・・・幸い死人も出なかった。あいつらも、俺たちがいると気づいて手加減したんだろう。」
琴「・・・。」
土「お前達のおかげで、無事全員逮捕することができた。・・・それを踏まえて、襲撃の件は見逃してやる。」
琴「・・・。」
土「お前の殺人についても・・・取り調べでも聞いたが、どんなに調べても証拠がみつからない。お前の刀からは襲撃の時の血痕しか見つからなかった。さすが、暁と言ったとこか・・・。」
琴「・・・。」
土「だが・・・お前がそういう以上、真選組は・・・お前を監視する。」
琴「・・・。」
土「今までみたいに・・・馴れ合うことはねぇ。」
琴「・・・。」
その言葉に再びカウンターに顔を伏せる。
土「母親の形見の刀は、真選組で預かる。決まりなんだ、悪く思うな。」
そう言って、店を出て行った。