土方夢小説

□はじまり
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琴「うーん!今日は休みだ!」

店の上に住む琴は、いつもより遅く起きる。

琴「そういえば、銀さんたち大丈夫なのかしら。」

あの後、銀時から連絡はなかった。

琴「あとで聞いてみようかな。」

一通りの家事や仕込みを終えて外へ出ると、お登勢のスナックから声が聞こえてくる。

琴「お昼はお登勢さんのところで済ませようかな。」

そう言ってお登勢の店の戸を開ける。

するとそこには、万事屋の3人とお登勢とキャサリン、そして昨日銀時に捕まっていた少年がいた。

琴「あら、銀さんたちここにいたんですね!」

神「あ!琴ちゃん!」

銀「こいつについて今話してるとこなんだ。お前も聞いてくれよ。」

銀時の話を聞く琴。

少年の名前は晴太というらしい。

どうやら晴太のお金の使い道は、吉原桃源郷の花魁と会うため、その店にお金を毎日渡していると言うのだ。

琴「晴太くん・・・。」

晴「親のいないオイラが金を手に入れる方法って言ったら限られてる。だから・・・。」

琴「・・・。」

銀「吉原で女に会うってつったら莫大な金が必要だろ?その日を生きるのもギリギリのお前が、なんでそんなことやってんだ?正直に話せ。」

晴「・・・オイラ、子供の頃に親に捨てられたんだ。」

琴「!」

晴「親の顔は覚えていない。物心ついた時オイラの前にあったのは、オイラを拾ってくれたジィちゃんの顔だった。」

新「・・・・。」

晴「そのジィちゃんも、三年前に病気で死んじまった。その死の間際に・・・ジィちゃん言ったんだ!」


『恥じるな晴太。お前は捨てられたんじゃない・・・救われたんだ。お前の親は闇の中から、お前を救ってくれたのだ。誇りに思え・・・お前の母は今も常世の闇の中。1人に一輪の如く、燦然と輝いておるのだ。』

晴「・・・母ちゃんかもしれないんだ、あの人。オイラの・・・母ちゃんかもしれないんだよ!会いたいんだ!会って話がしたいんだよ!!」

神「・・・。」

晴「でも、何度呼びかけても叫んでも・・・あの人はオイラの方を見ようともしない。手なんかまるで届かないんだ。」

キャ「・・・。」

晴「だから、オイラ・・・たとえ一時でもあの人に会おうと・・・客としてあの人に会おうって。必死にお金を手に入れようと、なんでもやった。泥棒みたいな馬鹿な真似まで・・・。」

そう言って泣き出す晴太。

登「本末転倒だよ。」

琴「え?」

登「母親に会うためにそんな真似して・・・母ちゃん喜ぶと思うかい?・・・働いてきな、ここで。」

その言葉に顔を上げる晴太。

登「吉原の女に会えるだけの金なんてだしゃしないがね。少しは足しになるだろうさ。」

琴「お登勢さん・・・。」

登「・・・だからスリなんてもう二度とするんじゃないよ。」

その優しさに涙を流す晴太。

銀「・・・俺の財布の10万の方もしっかり稼いでくれよな。」

その言葉に涙をゴシゴシと拭く。

晴「だから!からっぽだったって言ってんだろ!」

琴「ふふ。」

晴「つーか、なんでさりげに増えてんだよ!」

銀「・・・利息だ。」

そう言って店を出て行く銀時。

その背中を黙って見る琴。
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