桐生夢小説
□集結
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遥「実は皆さんに、どうしても話しておかなければならない事があります。」
静まり返る会場。
遥「今、私がこのステージの上に立てているのは決して自分1人の力ではありません。私を支えてくれた事務所の社長やマネージャー・・・ダメな私を見捨てずに指導してくれた先生方。プリンセスリーグで互いに競い合ったライバルたち。そして、何よりもこんな私の事を応援してくれる、みんなのお陰です。」
芽「遥ちゃん・・・。」
遥「でも、そんな皆んなに隠してた事があります。・・・それは、私の家族のことです。」
真「なっ。」
秋「遥ちゃん・・・。」
遥「私はずっと、自分の親の顔を知らずに育ちました。親のいない私にとって、養護施設で一緒に暮らす子供達や面倒を見てくれるおじさん、そしてその奥さんは本当の家族以上に大切な存在でした。」
芽「・・・。」
遥「でも、その大好きなみんなから私は離れてしまいました。アイドルとしてデビューする為です。」
スタッフたちがざわつき始める。
遥「私は、自分がアイドルになって成功することで養護施設の経営を助けられると思いました。しかし、それは同時に・・・私と私をこれまで育ててくれた大事な人との絆を断ち切ることにつながったんです。」
品「・・・。」
遥「私を育ててくれたおじさんは・・・昔、極道と呼ばれていた人でした。他の人から見たら怖いかもしれないけど、私にとってのおじさんは・・・強くて、優しくて・・・頼りがいがあるけど、どこかちょっと抜けてて・・・。」
芽「遥ちゃん・・・。」
芽依は涙を流した。
遥「私はそんなおじさんのことが・・・大好きでした。けど、今はもうおじさんのことを家族と呼んじゃいけない・・・おじさんだけじゃない・・・優しくて、強くて、時には厳しかった奥さんも・・・もう家族とは呼んではいけないんです。」
遥も涙を流した。
遥「それでも私、後悔はしていません。私にこの世界を見せてくれた事務所の社長には、言葉にはできないくらいの感謝をしています。」
冴「・・・。」
遥「毎日が新鮮な驚きに満ちていて、嬉しいこと・・・楽しいこと。辛いこと・・・悲しいことたくさんありました。これからもそんな生活が続くのかと思うと、心がワクワクします。」
拓「ねーね!」
遥「けど、ファンのみんなや何より自分自身に嘘をついて生きていくことは、私にはできません。私の夢は・・・アイドルになること。でももう一つあったんです。大好きな人たちと一緒に幸せに暮らすこと・・・。今日この舞台に立って、私にとって何が一番大事なのかやっとわかりました。だからもうこれ以上歌うことはできません。」
遥は覚悟を決める。
遥「私は、桐生一馬の家族です。」
ざわつく会場。
遥はお辞儀をし、マイクを置いた。
そして遥は走り出した。
芽「遥ちゃん・・・。」
涙が止まらない芽依。
拓「ママ・・・いい子いい子。」
頭を撫でる拓海を優しく抱きしめる。
真「・・・ややこしいことになってしもうたな。世の中はそう簡単に極道を受け入れへん。」
冴「・・・。」
真「これからどないすんねん。」
秋「とりあえず僕は日本ドームに向かいます。仲間たちがピンチかもしれないしね。」
芽「・・・。」
秋「芽依ちゃんはどうする?」
芽「・・・私は・・・遥ちゃんと一馬さんを探します。」
秋「・・・わかった。何かあったら連絡してね。」
芽「・・・はい。」
芽依はペコリとお辞儀をし走っていった。