Book
□奪ってなんて。
1ページ/9ページ
最近、うっしーが優しい。
いや、元から優しかったんだけど……。
元から視聴者にはゲス沢なんて言われてたけど、本当はすごく気使ってくれるしみんなのことを見てくれている。
そんなうっしーが、最近さらに優しい。
俺があげた実況動画にあからさまな悪口コメントが書かれていて、それでいろいろ考え込んで悩んで落ち込んでいた時も一番初めに「大丈夫?何かあったら言えよ」って声をかけてきたのはうっしーだった。
この前実況者仲間で飲み会に行った時も、うっしーは俺の隣で「あんまり飲み過ぎんなよ」ってずっと言ってた。多分、この前の印象が強いから注意してくれてるんだと思うけど。帰りも、うっしーは電車に乗らずに家まで帰れるのに、「暇なんだよねー」とか言ってわざわざ俺を駅まで送ってくれた。
全部、あの飲み会の後から。
レトさんにキヨのことが好きだと暴露した後からだったと思う。
「なんか、彼女みたい……」
「は? 何お前いきなり」
色々考えてたら、つい独り言が出てしまった。隣にはキヨがいるのに。
今日はキヨが実況を録りに俺の家に来ていた。あれから普通に仲良くしてもらって、今まで通りわいわい騒がしい実況を録っている。
「お前、やっと女に興味が出てきたわけ?」
「えっ、違うって! 俺はキヨのことが好きなんだよ!」
「うっせーばか! 大きい声でそーゆーこと言うな」
顔を真っ赤にして照れるキヨを、愛おしく思う。
そう、俺はキヨが好き。
でもキヨはレトさんのことが好きで、俺はこの前ふられたばっかなんだけど……。
そういえば、キヨとこうやってわいわいはしゃげるのもうっしーのおかげだなあ。
って、またうっしーのこと考えてる。
うっしー、気付いたら側にいること多いんだもんなあ。