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□誘惑と葛藤と、
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「……で、やった」
「え?」
「だからっ! さっき風呂場で、自分でやったから……」
それは、キヨが自分で後孔に指を入れて弄っていたんだろうか。
それって世にいうオナニー? なんて考えて、なんでそんなことをキヨが……?と1人でひたすら首を傾げる。
「ネットで、その方がヤる時痛くないって書いてたから……だから、俺は初めてだし、フジ以外とこんなことしねーし……」
俺の思考を読み取ったかのようにキヨが発言し始めた。
その言葉の意味を理解するのには時間がかかったけど、つまりは俺とのそーゆう行為を期待していたから自分で緩くしていた、ということなんだろう。
風呂の時間がいつもより長かったのも納得がいった。
「というか、こーゆう時に限って可愛いこと言うよね……」
俺以外とはしない。なんてこれ以上の、殺し文句はあるだろうか。
いろんな意味で死んでしまいそうだ、萌え死にだ。
「疑ってごめん。あと、ありがと」
そう言って笑いかければ、キヨは顔を真っ赤にして「続けろ」なんて言ってくる。
キヨによって解かされたそこに、ゆっくりと自らの自身を埋めていった。
「っう、あ……」
「痛い?」
「だい、じょぶ……だから」
どんなに慣らされていても初めてはやっぱり痛いのだろうか。
大丈夫と言っていても、顔を歪めるキヨの、頭を俺はそっと撫でた。
「はやく、うごけよ」
しばらくそのままの状態でいたが、それを合図に俺は動き出した。
「っん、ッぁ、ああっ…!?」
ある一点をつけば、苦しそうだった声も甘い声に変わる。ここがキヨのイイところらしい。
「あっ、はぁッ、っああ!」
そこを重点的に責めていると、キヨが俺にしがみついてきた。
キスをすると、荒い吐息が伝わってくる。
「フジぃっ、もっ、むり……ッ」
「イキそ? いいよ」
きゅうきゅうと締め付けてくるのに負けず、腰を速く動かす。
「は、っやぁ、あ、あぁッ…!!」
びくんと大きく身体を跳ねさせ、キヨが達すると同時に俺も欲を吐き出した。
キヨの後孔から、俺の出した欲が溢れ出してきてソファを汚す。いくらカバー付きとはいえこれはまずかったかもしれない。
「キヨ、身体痛くない……?」
「…は、痛いに、決まってんだろ」
行為のあとだというのに俺を睨んでくるキヨは、まあいつものキヨだ。
なんだか、安心する。
「キヨ、好き」
「……俺も」
こうやって強がって睨んできてても、愛の言葉にはちゃんと答えてくれるのも、いつもの優しいキヨだ。
「シャワー浴びてくる」
そう言って背中を向けたキヨを見て、もう一度好きだなあと心の中で呟いた。
そう、だよね。
彼も同じ気持ちなら、我慢なんてしなくて良かったのかもしれない。
end.
→あとがき