トリック&トリック

□初めまして聖帝
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「……んでホントに来ちゃったよ……聖帝学園……」


真新しい制服に身を包み、やって来たのは先日試験を受けた(正確に言うと試験自体は気が付いたときには終わっていた)あのブルジョアの大きな学園。

謎の少年、ユウキから突然の死亡宣告を受けた私はどうやら乙女ゲーム「vitaminX」の世界に転生したらしかった。

もちろん、最初の方は完全に半信半疑だったのだが、ユウキから家だの制服だの教科書だのを用意してもらい、新学期が始まる今日まで生活してここが本当にゲームの世界だということを実感していた。

「三次元にヴィスコンティってバンドは存在しないもんね」


仮に三次元にあったとしてもこっちの世界ほど有名じゃないだろうし、なによりbaseが七瀬瞬の時点で完璧にvitaminの世界だ。


「まさかホントに通うことになるとはね」

無駄に大きな門をくぐり抜け敷地内に足を踏み入れながらしみじみと思う。
正直、楽しみじゃないわけがない。
今日が来るのをずっと楽しみに待っていた。

あっちに残してきた家族や友達には悪いが。


(皆、何してるかな……)


私は居なくなったけど、両親はちゃんと笑って過ごせているだろうかとか、学校の友達に漫画借りっぱなしで死んじゃったから申し訳ないな……とか、目を閉じて感傷に浸たる。


「きゃっ!?」


突然、身体中に物凄い衝撃が走り思わず尻から地面に倒れる。無論、勢いよく尻餅を着いた為、尻から伝わる痛みは想像を越えていた。


「いったぁぁっ!!」


あまりの痛みに目の端に若干涙を浮かべながらぶつかってきた相手を確認すると、新品であろうピンクのスーツを身に付けた女性が私と同じような体勢で尻餅を着いていたのだった。

その容姿を見たときに私は確信する。
彼女はゲームに出てくるヒロインの南 悠里先生だ。と。

「ご、ごめんなさい!急いでてつい…怪我はない?」


先生はすぐさま立ち上がると私に手を伸ばす。


「いえ、私も不注意でした。すいません。先生こそお怪我はありませんか?」


「えぇ平気よ。ありがとうね」


明るく微笑む先生は女の私ですらついじーっと眺めてしまうほど綺麗で、そりゃ皆イチコロだわ。なんて内心納得してしまう。


「あ、あの。失礼ですがお名前は……?」

「南 悠里よ。今日から新任なの」

「え、そうなんですか?私も今日から編入なんです」

「そうなの?偶然ね!ええっと……」

「篠崎優乃って言います!よろしくお願いします!」

「篠崎さんね。よろしく!」


なんという運の強さなのだろうか。まだ校舎にすら足を踏み入れていないというのにゲームヒロインである南先生と知り合いになれてしまうとは。

私と南先生は共に職員室に用事があるため、そのまま南先生と色々な会話をしながら職員室へ向かった。

南先生は元々中等部から来たとか、校舎に来る途中で普通学校には建っている筈のないような豪華絢爛な建物が建設されてるとか。
全部知っていたが隣で楽しそうに南先生が話すものだから、こちらもついつい笑顔になってしまう。
こんな先生だからこそB6を変えることが出来るのだろうと、心の底から思えたのだった。


お互い職員室に着くと目的の違いから別れたが、南先生と別れる際「またお話しましょうね!」といってもらえて今、有頂天なのはまぁ許してください。

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