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□剛力無双!
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「『蘇生包丁』だ」
「蘇生…包丁……?」
「切れば切るほど蘇る。人間界では禁止された使い方だが……これが本来の使用法さ」
先ほどまで夜空のように黒くキラキラと輝いていた包丁が、普通の包丁の姿に戻った。
「まっ、みんな禁止されたからやらないわけじゃないがな。この技を使える料理人は、ほとんどいないからさ」
「禁じ手の技を、どうして……」
「捌けない食材がたくさんあるからだよ。――グルメ界にでは」
「グルメ界!?」
「俺が今いる場所だ」
「えっ」
「俺を超えてみろと言ったはずだが……どうやらお前との差は、開く一方だな。こんなとこで、くだらん食義を学んでいるのを見ればわかる」
「っ!」
その言葉で先ほどまで大竹を見て目を見開いていた小松が、顔をうつむけて歯を食いしばっていた。
「くだらないなんて……違う……」
「ん?」
「違うよ、竹ちゃん! 食義は僕ら料理人が一番大事にしなくちゃならないことだ!」
小松はこの食林寺で修業したことで、食材に対して料理人として新たに食材と向き合うことができた。それを否定する大竹に小松は必死に訴える。
「いいか、小松……――強い者こそが、勝つ! 勝者こそが全てなんだよ!」
「っ!」
「相変わらず甘いな、お前は。何もわかっていない」
「わかってないのは竹ちゃんだ! 食義は……感謝の気持ちの大切さを、僕はトリコさんと瑞貴さんと学んだんだ!」
「……まったくお前は、人の忠告も聞かないな」
「えっ!?」
「舞獣姫と縁切っとけと言ったのに、まだ一緒にいる……本当にお前はあいつに惚れているようだな」
「だ、だからなんなんだよ!」
「あの姿を見てもそう言えるか?」
「…………?」
小松は大竹が指差した先を見ると、千代と対峙している玄武を見つけた。今まで大竹のことで頭がいっぱいだったのか向こうの戦いには気づいていなかったようだ。
「あ、あの亀は……!?」
「お前、あいつが異端な存在だと知っておきながら、あの姿は知らなかったのか。あれは舞獣姫さ」
「あれが…瑞貴さん……!?」
「他にも龍になれるらしいし、それに加えて人間の姿より化け物同然の力を持っている。この食林寺が保てる力を持っているのも、あれが守っているからさ。千代を相手にしながら大したモンだよ」
(そうか、この姿こそが瑞貴さんが抱えていた力……!)
小松は話に聞いていたとはいえ、瑞貴が四神に変化する姿は初めて見た。青龍になったアイスヘルでは自分は地下にいたし、白虎になったグルメ界では自分は人間界にいた。玄武の――四神の存在を認識した途端、ここまで離れているのに巨大な強さが伝わってくる。