特別編

□癒しはどこに?
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ここ最近、瑞貴は非常に悩んでいた。それは――トリコとサニーの誘いである。


『おい瑞貴! 珍しい食材あったって情報が入ったぞ! 今すぐ行こう!』

『瑞貴! サイッコーにビューティフルな食材を採りに行くぞ!』


毎朝競うようにどちらかが必ずやってくる。どちらかに付き合えば、帰った翌日にすぐにどちらかが来る。合間に寄付活動もしているのでその連続に疲れてきた。


「もう今日は来ないことを願おう……」


先ほどまで寄付活動を終えて深夜の2時に帰った瑞貴は、風呂と食事を終えてベッドに入ればすぐに眠りに入った。



☆☆☆☆☆


同日の朝の4時。まだ朝日すら昇るかわからない時刻に、大きな白い狼と長いピンクの蛇がヒールフォレストを駆けていた。


「(ナ)んで、オメらがいんだよ! 俺(レ)は瑞貴をライフに誘うんだ! 邪魔すんな!」

「そっちこそ! これから瑞貴は俺たちとハントに行くんだよ! 引っ込んでろ!」

「トリコさ〜ん……まだ眠いです……」

〈ユーン……〉


クインの頭に乗るサニーが叫ぶと、テリーの背中に乗るトリコも負けじと叫ぶ。小松とユンはトリコに予定もなく無理矢理連れて来られたので眠くて仕方なかった。


「癒しの国・ライフの食材も温泉も女には大人気だ。瑞貴は俺(レ)と一緒に来るし!」

「フンッ! こっちにはテリーとウォールペンギンがいるんだ。動物好きの瑞貴にはたまらないコンビに食いつくさ」

「いや、いくら瑞貴さんでもこんな時間に来たら……」

「「着いた!」」


小松が忠告する前に瑞貴の家に着き、テリーとクインからそれぞれ降りたトリコとサニー。一目散に扉に向かってノックとは思えないほど強く叩く。


ドンドンドン!


「おい瑞貴! ハントに行こうぜ! 今日はテリーもウォールペンギンもいるぞ!」


ドンドンドン!


「瑞貴! 俺(レ)とクインとライフに行って最高(サイコ)にビューティフルな一日にするし!」


パッ! ガチャ。


家の中の電気が点くと扉も開いて瑞貴が出てきた。光の陰で表情は見えないがトリコとサニーはお構いナシだ。


「瑞貴! お前は俺と行くよな!?」

「何(ニ)言ってんだし! 瑞貴は俺(レ)と行くべきだし!」

「……い」

「「ん? ――ゲッ!」」


低く呟いた瑞貴の声にトリコとサニーは言い争いをやめて瑞貴を見ると青ざめた。

瑞貴は眉間に皺を寄せて背後にはグルメ細胞のオーラを出している。それと同時にトリコは思い出した。――瑞貴は睡眠妨害されるのが何よりも嫌いなことを。過去に自分とゼブラが被害に遭ったのだ。


「こちとら帰ったの2時だぞ? お前ら毎朝毎朝しつけぇんだよ」


瑞貴はブレスレットを薙刀に変化させると、即座に構えた。さすがにマズいと思った二人は慌てて弁解する。


「ちょっと待て! 俺らが悪かった!」

「ま、また今度にするし!」

「問答無用! 竜巻乱舞!!」

「「ぎゃあぁぁあああ!!」」


今まで最高のではないかと思える瑞貴の竜巻乱舞が、トリコとサニーを空の彼方に吹っ飛ばした。それを見届けた瑞貴は呆然とする小松とユンとテリーとクインに顔を向ける。

技を放ったあとのせいか思わず全員背筋を伸ばした。古代の王者の血を引くテリーや、全ての蛇の母と呼ばれるクインすらも、今の瑞貴には恐れていた。
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